カテゴリー: ファイナンス

オプション取引-4-プットオプションとは | デリバティブの基礎-7

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

 

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるオプション取引、そのオプション取引のうち「売る権利」であるプットオプションについて説明したいと思います。

理解しやすいように、指示語をなるべく使わないように記載しているため、同じ表現が続いて読みづらくなっていますがご了承ください。

 

オプション取引の基礎と具体的なイメージにについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-1-オプション取引とは | デリバティブの基礎-4
オプション取引-2-具体的イメージ | デリバティブの基礎-5
「買う権利」であるコールオプションについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-3-コールオプションとは | デリバティブの基礎-6

 

 

プットオプションとは

プットオプションとは、
ある商品(原資産・・・為替や株式、債権など)を
あらかじめ決めた将来の期日(満期日)に、
(または、あらかじめ決めた将来の期日”まで”に、)
あらかじめ決めた価格(権利行使価格)で、
「売る権利」を
売買する取引をいいます。

 

 

プットオプションを買った人

「買う」「売る」という言葉がたくさん出てくるので分かりづらいかもしれません。ごっちゃにならないように気をつけてくださいね。

プットオプションを買った人とは、「売る権利」を買った人のことをいいます。

 

オプションを買うということは、オプションを売った人から権利を買うことになります。オプションを買った人は、オプションを売った人に対して、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を支払うのです。

 

プットオプション「売る権利」を買った人は、プットオプションを売った人に対して、「権利行使価格で売っても売らなくても好きな方を選んでいいですよ」、という権利を買ったことになります。

繰り返しになりますが、プットオプションとは「売る権利」を売買することです。

 

 

市場価格が上がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも安い権利行使価格で売ると損をするからです。
市場価格が上がった場合のプットオプションを買った人の損失は、最大でもはじめに支払ったオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≧ 権利行使価格
プットオプションを買った人の損失 = オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使します。市場価格で買って、プットオプションを売った人に対して権利行使価格で売れば利益が出るからです。
市場価格が下がった場合のプットオプションを買った人の利益は、最大で権利行使価格-オプション料の金額まで大きくなる可能性があります。

 

原資産の市場価格 < 権利行使価格
プットオプションを買った人の損益 =
権利行使価格 - 原資産の市場価格 - オプション料

 

 

プットオプションを売った人

プットオプションを売った人とは、「売る権利」を売った人のことをいいます。

オプションを売るということは、オプションを買った人に権利を与えるということになります。オプションを売った人は、オプションを買った人から、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を受け取るのです。
オプションを売った人には権利はなく、オプションを買った人の権利行使に応じる義務があります。

 

プットオプション「売る権利」を売った人は、プットオプションを買った人に対して、「権利行使価格で売っても売らなくても好きな方を選んでいいですよ」、という権利を与えることになります。

 

 

市場価格が上がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも安い権利行使価格で売ると損をするからです。

そのため、プットオプションを売った人は、はじめにプットオプションを買った人から受取ったオプション料(プレミアム)が利益になります。
市場価格が上がった場合、プットオプションを売った人の利益は、最大でもオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≧ 権利行使価格
プットオプションを売った人の利益 = オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使します。市場価格で買って、プットオプションを売った人に対して権利行使価格で売れば利益が出るからです。

そのため、プットオプションを売った人は、市場価格が下がった場合、市場価格よりも高い権利行使価格でプットオプションを買った人から買わなければならなくなり損をしてしまいます。損をしてしまいますが、権利行使に応じる義務があります。
プットオプションを売った人の損失は、「オプション料 - 権利行使価格」まで拡大する恐れがあります。

 

原資産の市場価格 < 権利行使価格
プットオプションを売ったの損益=
原資産の市場価格 - 権利行使価格 + オプション料

 

 

プットオプションの数値例

CさんはDさんから、「半年後に乙社株式を200円で売る権利」というプットオプションを買ってオプション料として20円を支払いました。

プットオプションの買った人・・・Cさん
プットオプションを売った人・・・Dさん
原資産・・・乙社株式
権利行使価格・・・200円
オプション料(プレミアム)・・・20円

 

 

乙社の株価が300円になった場合

乙社の株価が300円になった場合のCさんとDさんの損益は次のようになります。

 

Cさんは権利行使をしないで権利を放棄します。よってCさんははじめに支払ったオプション料だけ損をしたことになります。

Cさんの損失=▲20円

 

Dさんは、Cさんが権利放棄したので、はじめに受取ったオプション料が利益になりました。

Dさんの利益=20円

 

 

乙社の株価が100円になった場合

乙社の株価が100円になった場合のCさんとDさんの損益は次のようになります。

 

Cさんは、市場から乙社株式を100円で買って、権利行使してDさんに対して市場から100円で買った乙社株式を200円で売ります。

Cさんの利益 = 200円 - 100円 - 20円 = 80円

 

DさんはCさんの権利行使に応じて、市場で買えば100円の乙社株式を、Cさんから200円で買わなければなりません。

Dさんの損失 = 100円 - 200円 + 20円 = ▲80円

 

 

プットオプションの損益推移

乙社株式の市場価格に応じて、CさんとDさんの損益は次のように推移します。

プットオプションを買った人・・・Cさん
プットオプションを売った人・・・Dさん
原資産・・・乙社株式
権利行使価格・・・200円
オプション料(プレミアム)・・・20円

 

 

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移はこのようになっています。

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移
乙社株式(原資産)の市場価格 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300
権利行使価格 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200
Cの権利行使・権利放棄 行使 行使 行使 行使 行使 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄
オプション料 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20
Cさんの損益 80 60 40 20 0 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20
作成 : 東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移はこのようになっています。

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移
乙社株式(原資産)の市場価格 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300
権利行使価格 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200
Cの権利行使・権利放棄 行使 行使 行使 行使 行使 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄
オプション料 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20
Dさんの損益 ▲80 ▲60 ▲40 ▲20 0 20 20 20 20 20 20
作成 : 東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

 

損益推移のグラフ

Cさん(プットオプションを買った人)とDさん(プットオプションを売った人)の損益推移をグラフで表すとこのようになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成したプットオプションの損益推移

 

権利行使価格の200円で線が屈折して、180円の損益分岐価格で、線が交差しています。
プットオプションを買った人とプットオプションを売った人のグラフは上下対象になっており、両者の損益を合算するとゼロになります。

 

Cさん(プットオプションを買った人)の損失は最大でもオプション料までになっているのに対応して、Dさん(プットオプションを売った人)の利益は最大でもオプション料までになっています。

 

ちなみにプットオプションのグラフとコールオプションのグラフを見比べると、左右対称になっていることが分かります。

コールオプションのグラフはこちらを参照下さい。
オプション取引-4-コールオプションとは | デリバティブの基礎-7

  • コールオプションを買った人とプットオプションを買った人のグラフは左右対称
  • コールオプションを売った人とプットオプションを売った人のグラフは左右対称
  • コールオプションを買った人とコールオプションを売った人のグラフは上下対象
  • プットオプションを買った人とプットオプションを売った人のグラフは上下対象

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

オプション取引-3-コールオプションとは | デリバティブの基礎-6

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

 

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるオプション取引、そのオプション取引のうち「買う権利」であるコールオプションについて説明したいと思います。

理解しやすいように、指示語をなるべく使わないように記載しているため、同じ表現が続いて読みづらくなっていますがご了承ください。

オプション取引の基礎と具体的なイメージにについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-1-オプション取引とは | デリバティブの基礎-4
オプション取引-2-具体的イメージ | デリバティブの基礎-5
「売る権利」であるプットオプションについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-4-プットオプションとは | デリバティブの基礎-7

 

 

コールオプションとは

コールオプションとは、
ある商品(原資産・・・為替や株式、債権など)を
あらかじめ決めた将来の期日(満期日)に
(または、あらかじめ決めた将来の期日”まで”に)
あらかじめ決めた価格(権利行使価格)で
「買う権利」を
売買する取引をいいます。

 

 

コールオプションを買った人

オプションを買うということは、オプションを売る人から権利を買うことになります。オプションを買った人は、オプションを売った人に対して、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を支払うのです。

コールオプション「買う権利」を買った人は、コールオプションを売った人から、権利行使価格で買っても買わなくても好きな方を選んでいいですよ、という権利を買ったことになります。

 

 

市場価格が上がった場合

コールオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使します。コールオプションを売った人から権利行使価格で買って市場で売れば利益が出るからです。
コールオプションを買った人の利益は、無限に大きくなる可能性があります。

 

原資産の市場価格 > 権利行使価格
コールオプションを買った人の損益 =
原資産の市場価格 - 権利行使価格 - オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

コールオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも高い権利行使価格で買うと損をするからです。
コールオプションを買った人の損失は、最大でもはじめに支払ったオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≦ 権利行使価格
コールオプションを買った人の損失 = オプション料

 

 

コールオプションを売った人

オプションを売るということは、オプションを買った人に権利を与えるということになります。オプションを売った人は、オプションを買った人から、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を受け取るのです。
オプションを売った人には権利はなく、オプションを買った人の権利行使に応じる義務があります。

コールオプション「買う権利」を売った人は、コールオプションを買った人に対して、権利行使価格で買っても買わなくても好きな方を選んでいいですよ、という権利を与えることになります。

 

 

市場価格が上がった場合

コールオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使します。コールオプションを売った人から権利行使価格で買って市場で売れば利益が出るからです。

そのため、コールオプションを売った人は、市場価格が上がった場合、市場価格よりも安い価格でコールオプションを買った人に売らなければならなくなり損をしてしまいます。損をしてしまいますが、権利行使に応じる義務があります。
コールオプションを売った人の損失は、無限に拡大する恐れがあります。

 

原資産の市場価格 > 権利行使価格
コールオプションを売ったの損益 =
権利行使価格 - 原資産の市場価格 + オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

コールオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも高い権利行使価格で買うと損をするからです。

そのため、コールオプションを売った人は、はじめにコールオプションを買った人から受取ったオプション料(プレミアム)が利益になります。
コールオプションを売った人の利益は、最大でもオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≦ 権利行使価格
コールオプションを売った人の利益 = オプション料

 

 

コールオプションの数値例

AさんはBさんから、「半年後に甲社株式を100円で買う権利」というコールオプションを買ってオプション料として10円を支払いました。

コールオプションの買った人・・・Aさん
コールオプションを売った人・・・Bさん
原資産・・・甲社株式
権利行使価格・・・100円
オプション料(プレミアム)・・・10円

 

甲社の株価が150円になった場合

甲社の株価が150円になった場合のAさんとBさんの損益は次のようになります。

 

Aさんは権利行使して、Bさんから甲社株式を100円で買って、100円で買った甲社株式を市場で150円で売ります。

Aさんの利益 = 150円 - 100円 - 10円 = 40円

 

BさんはAさんの権利行使に応じて、市場から甲社株式を150円で買って、Aさんに100円で売ります。

Bさんの損失 = 100円 - 150円 + 10円 = ▲40円

 

 

甲社の株価が50円になった場合

甲社の株価が50円になった場合のAさんとBさんの損益は次のようになります。

 

Aさんは権利行使をしないで権利を放棄します。よってAさんははじめに支払ったオプション料だけ損をしたことになります。

Aさんの損失 = ▲10円

 

Bさんは、Aさんが権利放棄したので、はじめに受取ったオプション料が利益になりました。

Bさんの利益 = 10円

 

 

AさんとBさんの損益推移

甲社株式の市場価格に応じて、AさんとBさんの損益は次のように推移します。

コールオプションを買った人・・・Aさん
コールオプションを売った人・・・Bさん
原資産・・・甲社株式
権利行使価格・・・100円
オプション料(プレミアム)・・・10円

 

Aさん(コールオプションを買った人)の損益推移

Aさん(コールオプションを買った人)の損益推移はこのようになっています。

Aさん(コールオプションを買った人)の損益推移
甲社株式(原資産)の市場価格 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150
権利行使価格 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
Aの権利行使・権利放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 行使 行使 行使 行使 行使
オプション料 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10
Aさんの損益 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 0 10 20 30 40
作成:東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

 

Bさん(コールオプションを売った人)の損益推移

Bさん(コールオプションを売った人)の損益推移はこのようになっています。

Bさん(コールオプションを売った人)の損益推移
甲社株式(原資産)の市場価格 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150
権利行使価格 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
Aの権利行使・権利放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 行使 行使 行使 行使 行使
オプション料 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10
Bさん損益 10 10 10 10 10 10 0 ▲10 ▲20 ▲30 ▲40
作成:東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

 

損益推移のグラフ

Aさん(コールオプションを買った人)とBさん(コールオプションを売った人)の損益推移をグラフで表すとこのようになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成したコールオプションの損益推移

 

権利行使価格の100円で線が屈折して、110円の損益分岐価格で、線が交差しています。
コールオプションを買った人とコールオプションを売った人のグラフは上下対象になっており、両者の損益を合算するとゼロになります。

Aさん(コールオプションを買った人)の利益は無限に大きくなる可能性があり、損失は最大でもオプション料までになっていることが、このグラフからも分かります。

対して、Bさん(コールオプションを売った人)の利益は最大でもオプション料までになっているけど、損失は無限に大きくなる恐れがあります。

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

オプション取引-2-具体的イメージ | デリバティブの基礎-5

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

 

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるオプション取引について具体的なイメージで説明したいと思います。

オプション取引の基礎については下記ページを参照下さい。
オプション取引-1-オプション取引とは | デリバティブの基礎-4

 

 

オプション取引の具体的なイメージ

乙社の株式(現在の株価は100万円)を買いたいと思っているAさん、その頭の中はこうなっています。

  • 乙社の株価は1年後には上がるだろうから、すぐにでも乙社の株式を買わないと機会を逃してしまうぞ。
  • とはいえ1年も先の話、乙社の株価は下がるかもしれないし、100万円も投資するのは心配だなあ。

 

そこでAさんは、
「1年後に乙社株式を100万円で買うことができる権利」を5万円(オプション料、プレミアム)で買うことにしました。
Aさんが買うのは乙社株式の現物ではなく「権利」なので、1年後の乙社株価がどうなっていようとも、乙社株式を100万円で買うこともできるし、買わなくてもかまいません。

 

1年後の乙社の株価はどうなったでしょうか。

 

 

乙社の株価が上がった場合

100万円だった乙社の株価は、1年後には150万円に上がっていました。

Aさんは「1年後に乙社株式を100万円で買うことができる権利」を行使して、100万円で乙社株式を買って、すぐに株式市場で150万円で売りました。

Aさんの儲けは
150万円-100万円-5万円=45万円
になりました。

もし、Aさんが「1年後に乙社株式を100万円で買うことができる権利」を買わずに乙社株式を現物で買っていた場合の
Aさんの儲けは
150万円-100万円=50万円
になっていました。

 

 

乙社の株価が下がった場合

100万円だった乙社の株価は、1年後には50万円に下がっていました。

Aさんは「1年後に乙社株式を100万円で買うことができる権利」を行使しないで放棄しました。
Aさんの損失は、権利代金であるオプション料の5万円だけで済みました。

もし、Aさんが「1年後に乙社株式を100万円で買うことができる権利」を買わずに乙社株式を現物で買っていた場合の
Aさんの損失は、
50万円-100万円=▲50万円
になっていました。

 

 

オプション取引の損益

オプション取引で権利を買ったAさんは、

  • 乙社の株価が上がったときには権利を行使して45万円儲けることができて
  • 乙社の株価が下がったときには権利を放棄して損失をオプション料(5万円)に限定することができました。

もし権利を買わずに現物取引で乙社株式を買っていたらAさんは、

  • 乙社の株価が上がったときには50万円の儲けが出て
  • 乙社の株価が下がったときには50万円の損失が生じていました。

 

このようにオプション取引は、

  • 儲けはオプション料の分だけ現物取引より減ってしまいますが、
  • 損失は最大でもオプション料にとどまります。

オプション取引は、損失を限定して利益を追求する取引であるといえます。

 

 

おわりに

コールオプション(買う権利)の売買、プットオプション(売る権利)の売買については下記ページを参照ください。
オプション取引-3-コールオプションとは | デリバティブの基礎-6
オプション取引-4-プットオプションとは | デリバティブの基礎-7

 

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

オプション取引-1-オプション取引とは | デリバティブの基礎-4

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるオプション取引について説明したいと思います。

 

 

デリバティブとは

デリバティブとは、株式や債券、金利、為替、コモディティ(穀物や金属、非鉄金属といった商品)などから”派生”した取引のことで、日本語では金融派生商品ともいわれます。デリバティブを一言で言うと、将来に行う取引を現時点で予約する取引です。

デリバティブの概要については下記ページを参照ください。
デリバティブとは | デリバティブの基礎-1

デリバティブ取引の代表的な取引には、今回ご説明するオプション取引以外にも、先物取引とスワップ取引がございます。それらについては下記ページを参照ください。
先物取引とは | デリバティブの基礎-2
スワップ取引とは | デリバティブの基礎-3

 

このデリバティブの代表的な取引として、今回ご説明するオプション取引があります。

 

 

オプション取引とは

オプションという言葉には皆さんも馴染みがあるのではないでしょうか。

例えば、携帯電話の契約には様々なオプション契約を付けることができますし、パックツアーの旅行に追加でオプションツアーを申し込んだりするといったことがありますね。このようにオプションサービスは、付ける付けないを自由に選ぶことができます。

 

オプション(option)という英単語には、「選択、選択権」といった意味があります。

 

デリバティブのオプション取引とは、
ある金融商品(為替や株式など)を、
あらかじめ決めた将来の期日に(または、あらかじめ決めた将来の期日”まで”に)、
あらかじめ決めた価格で、
買う「権利」(または、売る「権利」)を
売買する取引をいいます。

 

予約申し込みには手数料がかかるけど、キャンセルすることができる予約取引をイメージしてください。

 

 

原資産

オプション取引の対象になる為替や株式などの金融商品のことを原資産といいます。

 

 

満期日

オプション取引で、あらかじめ決めた将来の期日のことを満期日といいます。

  • 満期日だけに限って権利を行使することができるオプション取引をヨーロピアンオプションといいます。
  • 満期日だけに限らず、満期日までならいつでも権利を行使することができるオプション取引をアメリカンオプションといいます。

 

 

権利行使価格

オプション取引において、あらかじめ決めた価格のことを権利行使価格といいます。

 

 

コールオプションとプットオプション

オプション取引には、買う権利と売る権利の2種類があります。

  • 買う権利のことをコールオプションといいます。
  • 売る権利のことをプットオプションといいます。

 

 

オプションの売買

オプション取引において、売買するものは「買う権利または売る権利」です。

売り買いという言葉が続いてややこしくなるので整理すると

  • コールオプションの買いとは、「買う権利」を買うことをいいます。
  • コールオプションの売りとは、「買う権利」を売ることをいいます。
  • プットオプションの買いとは、「売る権利」を買うことをいいます。
  • プットオプションの売りとは、「売る権利」を売ることをいいます。

 

この「権利」は無料ではありません。旅行のオプションツアーと同様に有料になります。この「権利」の価格をオプション料(プレミアム)といいます。「権利」を買った人は、「権利」を売った人にオプション料を支払います。

 

「権利」を買った人は、その「権利」を行使するか行使しないかを自由に選ぶことができます。
「権利」を売った人は、「権利」を買った人がその「権利」を行使した場合は、権利行使価格で売買に必ず応じなければなりません。

 

 

オプション取引とは-2 | デリバティブの基礎-5 に続きます。

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

売上が増えたのに資金繰りが苦しくなるのはなぜ?

はじめに

こんにちは、東京港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、資金繰りについて解説します。

今回は、売上の増加が資金繰りを苦しくする場合があることについて説明したいと思います。

 

 

売上が増えたのに資金繰りが楽にならない

売上が増えたのに資金繰りが楽にならない。売上が増加したことで、むしろ資金繰りが苦しくなっている。こんな経験をしたことがある会社や個人事業主の方はけっこういらっしゃると思います。

感覚的には、売上が増えれば資金繰りが楽になると思いませんか?

しかし実際は、売上が増えることによって資金繰りが苦しくなることが往々にしてあります。その原因は、売上の入金と仕入れや経費の出金のタイミングがズレていることにあります。このズレの存在が、資金繰りを管理する必要性につながるのです。

 

 

売上の増加が資金繰りを苦しくする理由

売上の増加が資金繰りを苦しくする理由は、売上の増加が運転資本(運転資金)の増加を招くためです。

運転資本については下記ページを参照ください。
運転資本 | 運転資本とは?
運転資本 | 運転資本を減らして資金繰りを楽にする

 

売上が増加するということは、その売上の増加に先駆けて、材料や商品の仕入れや経費などが増加することになります。

現金商売を除いて、材料や商品の仕入れや経費などの支払いが先になり、売上の入金が後になります。よって売上の入金があるまで、増加した支払いが先行してしまう、つまり運転資本(運転資金)が増加します。これが、売上の増加が資金繰りを苦しくする理由なのです。

現金商売の場合は、売上時に即入金になるので、売上の増加による資金繰りの悪化をそれほど心配する必要はありません。これが現金商売は強いと言われる所以です。

 

売上アップの計画があるのであれば、それに合わせて資金繰りの計画も立てる必要があります。そうしないと、売上と利益があっても現金がない状態に陥り、最悪の場合は黒字倒産になってしまいます。

黒字倒産については下記ページを参照ください。
黒字倒産とは?利益あるけどキャッシュがない

 

なお、売上増加で資金繰りが苦しくなるのは一時的なことで、売上の増加が落ち着けば資金繰りも落ち着いてきます。しかし、事業が順調に成長して右肩上がりの売上増加がしばらく続く場合などは、しっかりと資金繰りの計画を立てて、増加する運転資本に対応するための資金調達を考えないといけません。

 

 

売上が減れば資金繰りは楽になるのか

それでは、売上が減った場合は資金繰りが楽になるのでしょうか。売上が減れば入金が減るので、資金繰りは苦しくなってしまいます。

変動費と言われる売上に連動して発生する仕入れや経費は売上の減少によって減りますが、そうではない、例えば家賃や人件費などの固定費は売上が減少しても減らないため、入金が減ればそれだけ資金繰りは苦しくなるのです。

変動費と固定費については下記ページを参照ください。
変動費とは 固定費とは

 

 

おわりに

売上や利益には注意を払っても、資金繰りや現金は疎かになりがちです。売上や利益はもちろん大切ですが、一番大切なのは「手元にどれだけの現金(キャッシュ)が残るのか」です。常に現金を意識してくださいね。

 

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。