オプション取引-4-プットオプションとは | デリバティブの基礎-7

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区・渋谷区・新宿区など東京都23区のベンチャー企業やスタートアップ起業を支援する公認会計士・税理士が、金融・ファイナンスについて解説します。

 

今回は、デリバティブの基礎として、デリバティブの代表的な取引のひとつであるオプション取引、そのオプション取引のうち「売る権利」であるプットオプションについて説明したいと思います。

理解しやすいように、指示語をなるべく使わないように記載しているため、同じ表現が続いて読みづらくなっていますがご了承ください。

 

オプション取引の基礎と具体的なイメージにについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-1-オプション取引とは | デリバティブの基礎-4
オプション取引-2-具体的イメージ | デリバティブの基礎-5
「買う権利」であるコールオプションについては下記ページを参照下さい。
オプション取引-3-コールオプションとは | デリバティブの基礎-6

 

 

プットオプションとは

プットオプションとは、
ある商品(原資産・・・為替や株式、債権など)を
あらかじめ決めた将来の期日(満期日)に、
(または、あらかじめ決めた将来の期日”まで”に、)
あらかじめ決めた価格(権利行使価格)で、
「売る権利」を
売買する取引をいいます。

 

 

プットオプションを買った人

「買う」「売る」という言葉がたくさん出てくるので分かりづらいかもしれません。ごっちゃにならないように気をつけてくださいね。

プットオプションを買った人とは、「売る権利」を買った人のことをいいます。

 

オプションを買うということは、オプションを売った人から権利を買うことになります。オプションを買った人は、オプションを売った人に対して、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を支払うのです。

 

プットオプション「売る権利」を買った人は、プットオプションを売った人に対して、「権利行使価格で売っても売らなくても好きな方を選んでいいですよ」、という権利を買ったことになります。

繰り返しになりますが、プットオプションとは「売る権利」を売買することです。

 

 

市場価格が上がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも安い権利行使価格で売ると損をするからです。
市場価格が上がった場合のプットオプションを買った人の損失は、最大でもはじめに支払ったオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≧ 権利行使価格
プットオプションを買った人の損失 = オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使します。市場価格で買って、プットオプションを売った人に対して権利行使価格で売れば利益が出るからです。
市場価格が下がった場合のプットオプションを買った人の利益は、最大で権利行使価格-オプション料の金額まで大きくなる可能性があります。

 

原資産の市場価格 < 権利行使価格
プットオプションを買った人の損益 =
権利行使価格 - 原資産の市場価格 - オプション料

 

 

プットオプションを売った人

プットオプションを売った人とは、「売る権利」を売った人のことをいいます。

オプションを売るということは、オプションを買った人に権利を与えるということになります。オプションを売った人は、オプションを買った人から、その権利の対価としてオプション料(プレミアム)を受け取るのです。
オプションを売った人には権利はなく、オプションを買った人の権利行使に応じる義務があります。

 

プットオプション「売る権利」を売った人は、プットオプションを買った人に対して、「権利行使価格で売っても売らなくても好きな方を選んでいいですよ」、という権利を与えることになります。

 

 

市場価格が上がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が上がった場合、権利行使しないで権利を放棄します。市場価格よりも安い権利行使価格で売ると損をするからです。

そのため、プットオプションを売った人は、はじめにプットオプションを買った人から受取ったオプション料(プレミアム)が利益になります。
市場価格が上がった場合、プットオプションを売った人の利益は、最大でもオプション料(プレミアム)に限定されます。

 

原資産の市場価格 ≧ 権利行使価格
プットオプションを売った人の利益 = オプション料

 

 

市場価格が下がった場合

プットオプションを買った人は、市場価格が下がった場合、権利行使します。市場価格で買って、プットオプションを売った人に対して権利行使価格で売れば利益が出るからです。

そのため、プットオプションを売った人は、市場価格が下がった場合、市場価格よりも高い権利行使価格でプットオプションを買った人から買わなければならなくなり損をしてしまいます。損をしてしまいますが、権利行使に応じる義務があります。
プットオプションを売った人の損失は、「オプション料 - 権利行使価格」まで拡大する恐れがあります。

 

原資産の市場価格 < 権利行使価格
プットオプションを売ったの損益=
原資産の市場価格 - 権利行使価格 + オプション料

 

 

プットオプションの数値例

CさんはDさんから、「半年後に乙社株式を200円で売る権利」というプットオプションを買ってオプション料として20円を支払いました。

プットオプションの買った人・・・Cさん
プットオプションを売った人・・・Dさん
原資産・・・乙社株式
権利行使価格・・・200円
オプション料(プレミアム)・・・20円

 

 

乙社の株価が300円になった場合

乙社の株価が300円になった場合のCさんとDさんの損益は次のようになります。

 

Cさんは権利行使をしないで権利を放棄します。よってCさんははじめに支払ったオプション料だけ損をしたことになります。

Cさんの損失=▲20円

 

Dさんは、Cさんが権利放棄したので、はじめに受取ったオプション料が利益になりました。

Dさんの利益=20円

 

 

乙社の株価が100円になった場合

乙社の株価が100円になった場合のCさんとDさんの損益は次のようになります。

 

Cさんは、市場から乙社株式を100円で買って、権利行使してDさんに対して市場から100円で買った乙社株式を200円で売ります。

Cさんの利益 = 200円 - 100円 - 20円 = 80円

 

DさんはCさんの権利行使に応じて、市場で買えば100円の乙社株式を、Cさんから200円で買わなければなりません。

Dさんの損失 = 100円 - 200円 + 20円 = ▲80円

 

 

プットオプションの損益推移

乙社株式の市場価格に応じて、CさんとDさんの損益は次のように推移します。

プットオプションを買った人・・・Cさん
プットオプションを売った人・・・Dさん
原資産・・・乙社株式
権利行使価格・・・200円
オプション料(プレミアム)・・・20円

 

 

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移はこのようになっています。

Cさん(プットオプションを買った人)の損益推移
乙社株式(原資産)の市場価格 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300
権利行使価格 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200
Cの権利行使・権利放棄 行使 行使 行使 行使 行使 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄
オプション料 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20
Cさんの損益 80 60 40 20 0 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20 ▲20
作成 : 東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移はこのようになっています。

Dさん(プットオプションを売った人)の損益推移
乙社株式(原資産)の市場価格 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300
権利行使価格 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200 200
Cの権利行使・権利放棄 行使 行使 行使 行使 行使 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄 放棄
オプション料 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20
Dさんの損益 ▲80 ▲60 ▲40 ▲20 0 20 20 20 20 20 20
作成 : 東京都港区の税理士法人インテグリティ

 

 

損益推移のグラフ

Cさん(プットオプションを買った人)とDさん(プットオプションを売った人)の損益推移をグラフで表すとこのようになります。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成したプットオプションの損益推移

 

権利行使価格の200円で線が屈折して、180円の損益分岐価格で、線が交差しています。
プットオプションを買った人とプットオプションを売った人のグラフは上下対象になっており、両者の損益を合算するとゼロになります。

 

Cさん(プットオプションを買った人)の損失は最大でもオプション料までになっているのに対応して、Dさん(プットオプションを売った人)の利益は最大でもオプション料までになっています。

 

ちなみにプットオプションのグラフとコールオプションのグラフを見比べると、左右対称になっていることが分かります。

コールオプションのグラフはこちらを参照下さい。
オプション取引-4-コールオプションとは | デリバティブの基礎-7

  • コールオプションを買った人とプットオプションを買った人のグラフは左右対称
  • コールオプションを売った人とプットオプションを売った人のグラフは左右対称
  • コールオプションを買った人とコールオプションを売った人のグラフは上下対象
  • プットオプションを買った人とプットオプションを売った人のグラフは上下対象

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京都23区で公認会計士や税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、石橋を叩いて渡る役として本業の事業による持続可能な成長をご支援します。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。