「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」(税務署)書き方記載例-フリーランス・個人事業主

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

フリーランス個人事業主として事業を始めるにあたっては、多くの書類を税務署や役所に提出する必要があります。これらの書類を作成することはそれほど難しくありません。しかし、本業に費やすべき時間を割いて、書き方をイチから調べて書類の空欄を埋めていくのは、とても億劫ですよね。

 

公認会計士・税理士として、港区、渋谷区、新宿区など東京23区でフリーランス・個人事業主事業として起業なさった方をサポートしてきた経験をもとに、フリーランス・個人事業主として事業を始めたら提出しなければいけない書類について、具体的な書き方をお伝えしたいと思います。

 

皆様の貴重な時間を少しでも有効活用できれば幸いです。

 

今回は、税務署に提出する「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」(個人事業主の場合)の書き方について説明します。

 

フリーランス・個人事業主の方ではなく、株式会社などの法人の方が「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する場合の記載例については、
「棚卸資産の評価方法の届出書」(税務署)書き方記載例-会社設立-法人
を参照ください。

 

 

 

個人事業主が税務署に提出する「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」とは

棚卸資産とは、在庫ともいわれるもので、事業における生産活動や営業活動の過程で生じる資産のことで、原材料、仕掛品、製品、商品などが該当します。

棚卸とは、ある時点での在庫(棚卸資産)の数を数えて、その時点での棚卸資産の数と金額を確定させる作業のことをいいます。

棚卸資産の金額が確定しないと、利益の金額も確定しません。棚卸資産の金額によって利益の金額が動くので、棚卸は非常に重要な手続きなのです。

棚卸資産の金額を確定させるときには、棚卸資産の評価方法を用います。この棚卸資産の評価方法にはいくつか種類があります。

そのため事業年度によって棚卸資産の評価方法を変えることで利益操作ができてしまいます。

そのようなことを防ぐために、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署に提出して、「うちの事業では棚卸資産の評価方法としてこの方法を用います。勝手に変更しません。」ということを税務署に伝えるのです。

 

 

棚卸資産の評価方法は何にすれば良いのか

「棚卸資産の評価方法って何を選べばいいの?」というご質問をよく頂戴します。しかし、業種や規模、人員によって変わってくるので、一概には回答できないのです。ですので、公認会計士や税理士に相談することをオススメします。あなたの事業に合った方法を教えてくれるはずですよ。

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出しないで、結果的に「最終仕入原価法による原価法」を選択しているフリーランス・個人事業主の方も多いです。

 

 

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する個人事業主

下記に当てはまる方が「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。

新たにフリーランス・個人事業主として事業を始めて、事業所得者になる予定の方

すでに、フリーランス・個人事業主として事業をしている方で、
従来の事業のほかに、他の種類の事業を始めた方
従来の事業をやめて、他の種類の事業を始めた方

 

 

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の提出期限

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の提出期限は、上記の「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出するフリーランス・個人事業主に当てはまった日の属する年分の確定申告期限になっています。

具体的にいうと、上記の「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出するフリーランス・個人事業主に当てはまった日の翌年の3月15日が提出期限になります。

3月15日の確定申告の期限までに、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出してくださいね。

 

 

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出しないとどうなるのか

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出しないと、棚卸資産の評価方法が「最終仕入原価法による原価法」という方法に勝手に決められてしまいます。

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出して、事業の実情に合致した棚卸資産の評価方法を選択してください。

 

 

受付印を押してもらって控えに

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署に提出するときは、同じ記載内容のものを2部用意してください。

そして、1部を税務署に提出して、もう1部には税務署の受付印をもらって持ち帰りましょう。郵送の場合も2部提出して、受付印を下さいとのメモ書きと返信用封筒と切手を入れておけば受付印済みのものが返送されてきます。

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」に限らず、税務署に書類を提出するときは、2部用意して、1部に受付印をもらって控えにして保管しておくといいですよ。

 

 

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の用紙

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の用紙は、国税庁HPにPDFファイルがあるので印刷して使って下さい。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/18.pdf

 

従来の棚卸資産の評価方法を変更しようとする場合は、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」ではなく、「所得税の棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」により変更の申請をしてください。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/20.pdf

 

 

 

「棚卸資産の評価方法の届出書」の具体的な書き方、記載例

フリーランス・個人事業主の方が税務署に提出する「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の具体的な書き方、記載例は下記のようになります。

https://www.integrity.or.jp/wp-content/uploads/2014/06/b8eef170ae65cf822146d6d2a04aa66e.pdf

 

所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

「棚卸資産の評価方法」と「減価償却資産の償却方法」の2つがありますが、「棚卸資産の償却方法」に○をつけて、「減価償却資産の償却方法」は2重線で消します。

 

○○税務署長殿

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する税務署名を記載します。

提出先の税務署は、個人事業の納税地を管轄する税務署なります。

東京都区内には税務署が複数ある場合があるがあるので注意してください。

ちなみに、

  • 港区には、麻布税務署と芝税務署があります。
  • 渋谷区には、渋谷税務署だけです。
  • 新宿区には、新宿税務署と四谷税務署があります。

所轄の税務署が分からない場合は、「住所 税務署 所轄」で検索してみてくださいね。

 

提出年月日

税務署に「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する日を、和暦で書きます。

 

納税地

個人事業の所得税の納税地として指定している場所の住所を書きます。

 

納税地が自宅住所になっているのであれば、住所地に○をして、自宅の住所と電話番号を書いてください。

納税地がお店や事務所の住所になっているのであれば、事業所等に○をして、そこの住所と電話番号を書いてください。

固定電話がない場合は携帯電話番号で構いません。

 

上記以外の住所地・事業所等

自宅以外に事業所などがない場合は、空欄になります。

 

自宅以外に事業所などがある場合は、④納税地に書いた住所以外の場所の住所と電話番号を書きます。

④納税地に自宅住所を書いた場合は、⑤には事業所等に○をして、事業所等の住所と電話番号を書いてください。

④納税地に事業所等の住所を書いた場合は、⑤には住所地に○をして、自宅住所と電話番号を書いてください。

固定電話がない場合は携帯電話番号で構いません。

 

氏名

自分の名前を書きます。フリガナも忘れずに書いてください。

印鑑は認印で構いません。

 

生年月日

生年月日を和暦で書きます。

 

職業

職業を具体的に書いてください。
例えば、インテリアデザイナー、公認会計士、税理士などです。

 

屋号

お店の名前など屋号がある場合は、その名称を書きます。

 

「棚卸資産の評価方法」については、次によることとしたので届けます。

「棚卸資産の評価方法」と「減価償却資産の償却方法」の2つがありますが、「棚卸資産の償却方法」に○をつけて、「減価償却資産の償却方法」は2重線で消します。

 

事業の種類

「事業の種類」には、その評価の方法を採用する事業の種類を、例えば、小売業、製造業などと書いてください。

 

棚卸資産の区分

「棚卸資産の区分」には、その評価の方法を採用する棚卸資産の区分を、⑪に書いた事業の種類ごとに、例えば、商品、製品、半製品、原材料、などと書きます。

 

評価方法

採用する棚卸資産の評価方法を下から選んで書きます。

  • 原価法
    • 個別法による原価法
    • 先入先出法による原価法
    • 総平均法による原価法
    • 移動平均法による原価法
    • 最終仕入原価法による原価法
    • 売価還元法による原価法
  • 低価法
    • 個別法による原価法に基づく低価法
    • 先入先出法による原価法に基づく低価法
    • 総平均法による原価法に基づく低価法
    • 移動平均法による原価法に基づく低価法
    • 最終仕入原価法による原価法に基づく低価法
    • 売価還元法による原価法に基づく低価法

 

減価償却資産の償却方法

今回は「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」なので、ここは空欄になります。

 

その他参考事項(1)

空欄のままになります。

 

その他参考事項(2)

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出することになった事情などを具体的に書きます。

新たに事業を始めた場合は、「新たに事業を開始したため届出」などと書いてください。

 

関与税理士

税務署に「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する段階で、関与税理士、顧問税理士が決まっているなどで、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を税理士に作成してもらった場合は、その税理士の氏名と電話番号を書きます。

 

※税務署処理欄

税務署が処理のために使う欄であるため、空欄のままにしてください。

 

 

 

フリーランス、個人事業主として起業する際に提出する主な書類

フリーランス、個人事業主として起業する際に提出しなければならない書類は、税務署に提出する「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」以外にもいくつかあります。

下記のページも参照ください。

 

 

おわりに

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を自分で書いて税務署に提出するのも良いですが、棚卸資産の評価方法についてどれを選べばよいのかについて、ぜひ税理士に相談してみてください。上にも書きましたが、棚卸資産の評価方法は、その事業の業種や規模、人員によって選ぶべきものが変わってきます。

 

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。