生命保険料控除とは?家族の分も対象になります

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、生命保険などの保険料を支払った場合に、所得控除を受けることができる生命保険料控除について説明します。
生命保険料控除は医療費控除とともにメジャーな所得控除なので、知っている方も多いのではないでしょうか。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは、一定の生命保険料、介護保険料、医療保険料、個人年金保険料を支払った場合、そのうち一定の金額を所得から差し引くことができる所得控除のことをいいます。

民間の生命保険会社などに支払う保険料をイメージしてください。似ているもので国など公的なところに支払う社会保険料は、生命保険料控除ではなく社会保険料控除の対象になります。

生命保険料控除の対象になる生命保険契約

生命保険料控除の対象になる生命保険契約は、保険料を支払っている本人またはその家族が保険金の受取人になっている生命保険契約などです。
ここで言う生命保険契約とは、生存又は死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約や共済契約のことをいいます。

生命保険料控除の対象になる介護保険契約、医療保険契約

生命保険料控除の対象になる介護保険契約、医療保険契約は、保険料を支払っている本人またはその家族が保険金の受取人になっている介護保険契約、医療保険契約などです。
ここで言う介護保険契約、医療保険契約とは、疾病又は身体の傷害等により保険金が支払われる保険契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金等が支払われる保険契約や共済契約のことをいいます。

生命保険料控除の対象になる個人年金保険契約

生命保険料控除の対象になる個人年金保険契約は、保険料を支払っている本人またはその配偶者が年金の受取人になっている個人年金保険契約などです。生命保険契約や介護医療保険契約とは異なり、本人および配偶者以外は対象とはなりません。
年金を受け取るまで10年以上の間、保険料を定期に支払う契約であることや、原則60歳になってから10年以上の定期又は終身で年金を受け取ることができるなどの要件があります。

生命保険料控除の対象にならない保険契約

生命保険料控除の対象にならない保険契約として下記のようなものがあります。

  • 貯蓄保険や貯蓄共済といわれるような保険期間が5年未満の保険契約
  • 外国の保険会社と日本国外において締結したもの
  • 信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約など

自分が入っている保険契約が生命保険料控除の対象になるかどうか

自分が入っている保険契約が生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険会社などから送られてくる「生命保険料控除証明書」などで確認できます。
この証明書は、年末調整のときや、確定申告のときに確定申告書に添付もしくは提示する必要があるので無くさないように保管しておいてください。

生命保険料控除として所得から差し引くことができる一定の金額

下表は平成24年1月1日以後に締結した保険契約、いわゆる新保険料についての記載となっています。
生命保険料控除として、最大で新生命保険料控除4万円、介護保険医療保険料控除4万円、新個人年金保険料控除4万円の合計12万円の所得控除を受けることができます。

新生命保険料控除
1年間に支払った保険料 生命保険料控除額
2万円以下 支払った保険料の全額
2万円超 4万円以下 支払った保険料 × 50% + 1万円
4万円超 8万円以下 支払った保険料 × 25% + 2万円
8万円超 4万円
介護保険料、医療保険料控除
1年間に支払った保険料 生命保険料控除額
2万円以下 支払った保険料の全額
2万円超 4万円以下 支払った保険料 × 50% + 1万円
4万円超 8万円以下 支払った保険料 × 25% + 2万円
8万円超 4万円
新個人年金保険料控除
1年間に支払った保険料 生命保険料控除額
2万円以下 支払った保険料の全額
2万円超 4万円以下 支払った保険料 × 50% + 1万円
4万円超 8万円以下 支払った保険料 × 25% + 2万円
8万円超 4万円
東京都港区の税理士法人インテグリティまとめ

生命保険料控除として所得から差し引くことができる金額は、その年に実際に支払った保険料をもとにして計算します。

実際に支払った金額が対象となるので、12月31日時点でまだ払っていない分は、その年の生命保険料控除の対象にはならず、実際に支払った年の生命保険料控除の対象になります。
平成✕6年12月分の生命保険料について、平成✕6年12月31日時点で支払うのを忘れており、平成✕7年1月に支払った場合は、平成✕7年の生命保険料控除の対象になります。

前納(前払い)した分の生命保険料については、前納した期間のうち1年内のものだけが、支払った年の生命保険料控除の対象になります。

全期前納と一時払いについては似ているようで大きく異なりますのでご注意ください。

全期前納 一時払い
しくみ 全保険期間の保険料を契約時に保険会社に預ける形で支払う 全保険期間の保険料を契約時に一括で支払う
生命保険料控除 毎年 初年度のみ
亡くなった時 保険金+未経過保険料 保険金のみ
解約した時 解約返戻金+未経過保険料 解約返戻金のみ
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家族の分の保険料を支払った場合

生命保険料控除の対象のなる保険料は、本人が契約した保険契約の保険料だけでなく、本人以外の方が契約した保険契約の保険料であっても、本人が支払っているならば対象になります。

この場合も、保険料を支払っている本人またはその家族が保険金の受取人になっている保険契約が対象になります。本人またはその家族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)であれば生計を一にしていなくてもかまいません。

夫が妻や子供の保険料を払っている場合が該当します。

保険料を家族で分散してさらなる節税

例えば・・・
夫が年間の保険料が10万円の生命保険に2つ入っていたとします。この場合、夫は年間20万円の保険料を支払っていますが、生命保険料控除を受けることができる金額は上限の4万円になります。

そこで生命保険2つのうち1つを妻の支払いにするのです。支払いのみ妻に変更するだけで名義は夫のままでかまいません。そうすると夫と妻がそれぞれ年間10万円の保険料を払うことになり、夫と妻の双方が4万円、合計で8万円の生命保険料控除を受けることができるようになるのです。

しかし
この方法は安易に実行してはいけません。生命保険は支払い時の節税だけでなく、考えたくはありませんが、万が一保険金を受け取る事態になったときの相続税まで考慮しなくてはいけません。保険料受け取り時に節税になっても、保険金受け取り時に増税になっては意味がないどころかマイナスになってしまいます。
必ず税理士に相談して、メリット・デメリットの説明を受けたうえで実行してください。

生命保険料控除を受けるには

フリーランス・個人事業主の方が生命保険料控除を受けるには、確定申告する必要があります。確定申告書の生命保険料控除の欄に記載して、保険会社などから送られてくる「生命保険料控除証明書」を確定申告書に添付するか提示します。
なお、会社勤め、会社役員の方などは確定申告する必要はありません。「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を年末調整時に会社に提出すればOKです。

その他の所得控除

その他の所得控除につきましては、下表のリンク先のページを参照ください。

所得控除の名称 詳細を開設したリンク先
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医療費控除とは?医療費の範囲はけっこう広いです2
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おわりに

家族の分の生命保険料を支払っているのに、生命保険料控除を受けるのを忘れている方がけっこういらっしゃいます。忘れずに控除を受けて節税してくださいね。ポイントは誰が契約しているのかではなく誰が支払っているかです。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。