医療費控除とは?医療費の範囲はけっこう広いです1

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、一定額以上の医療費を支払った場合に、所得控除を受けることができる医療費控除について説明します。所得控除のなかでも有名なので名前は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

医療費控除とは

医療費控除とは、自分や自分と家計が同じ家族の医療費を支払ったときに、確定申告で一定の金額を所得から差し引くことできる所得控除をいいます。医療費控除の分だけ所得が減るので、税金が安くなり節税になります。

 

医療費控除の対象となる医療費

全ての医療費が対象となるのではなく、医療費控除の対象となる医療費は下記の2つとも当てはまる医療費になります。

  1. 医療費が自分や自分と家計が同じ家族のために支払われたものである
  2. 医療費がその年の1月1日から12月31日の間に支払われたものである

 

医療費になるもの、ならないもの

大前提としては、
診療、治療に必要なものが、医療費控除の対象になります。そのうち病状などに応じて一般的に支出される水準を大きく超えない金額が医療費控除の対象となる医療費になります。
予防や健康増進、疲労回復、美容のためのものは、医療費控除の対象になりません。

医師の診療、治療の対価は、医療費控除の対象になります。
健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として、医療費控除の対象になりません。

治療、療養に必要な医薬品の購入の対価は医療費控除の対象になります
風邪薬などは医療費控除の対象になりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられるものは医療費控除の対象になりません。

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価は医療費控除の対象になります。疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは医療費控除の対象になりません。カイロプラクティックも医療費控除の対象になりません。

健康保険が適用される治療を受けて治療費の3割を負担して支払った場合は、その3割負担分が医療費控除の対象になります。

健康保険が適用されるかどうかは関係ありません。健康保険が適用されない治療、つまり3割負担等ではなく全額の10割負担して治療を受けた場合でも負担分は全額が医療費控除の対象になります。

通院のための交通費も医療費控除の対象になります。公共交通機関の運賃などが該当します。通院の日付が分かる診察券と、使った交通機関、運賃をメモしておけば領収書がなくてもかまいません。
タクシー代は基本的に医療費控除の対象になりません。他に交通機関がない、急病である、骨折しているなど、タクシーを使うことが一般的にみてもおかしくないと考えられる場合のみ医療費控除の対象になります。この場合はタクシーを使うにいたった経緯を説明できるようにしておかないといけません。

薬局などで買ったものでも、カゼ薬や胃腸薬、鎮痛剤など治療のための薬の購入代金は医療費控除の対象になるので忘れずにレシートを取っておいてください。この場合、領収書よりも商品名の入っているレシートのほうが好ましいです。なお治療のための薬でも医薬部外品にあたるものは医療費控除の対象になりません。ビタミン剤や栄養ドリンクなど、予防や健康増進のためのものは医療費控の対象になりません。

不妊治療は、治療なので医療費控除の対象になります。

インフルエンザなどの予防接種は、予防のためなので医療費控除の対象になりません。

 

医療費控除の対象となる一定の金額の計算方法

次の式で計算された一定の金額を、医療費控除として所得から差し引くことができます。
なお200万円が医療費控除の限度額になります。

( 実際に支払った医療費の合計金額 -保険金などで補てんされる金額 ) - 10万円

 

保険金などで補てんされる金額

保険金などで補填される金額の例としては下記のようなものがあります。

  • 生命保険契約などで受け取る入院費給付金
  • 健康保険などから受け取る高額療養費、家族療養費、出産育児一時金

保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。よって引ききれない金額があっても他の医療費から差し引く必要はありません。

 

10万円の足切り金額

医療費控除の対象となる一定の金額を計算するときは10万円が差し引かれます。これは、少額な医療費まで医療費控除の対象にしないような足切り金額的な意味があります。医療費が合計で10万円を超えたときだけ超えた分を控除しましょう、10万円以下なら少額なんだし控除はしませんよって感じでしょうか。

医療費を10万円以上も払うのはハードルが高いなあ、とお思いの方も多いでしょう。でも、上で言ったとおり医療費控除の言う医療費の範囲はなかなか広いです。特に家族が多い方などは10万円を超えていても気づかない場合がけっこうありますよ。

所得が多い方に比べて所得が少ない方にとっては、10万円という金額はより重みがあるでしょう。そのため国も所得が少ない方に対しては、この足切り金額を10万円より低くして、少額な医療費でも医療費控除できるようにしています。

具体的には、その年の総所得金額等が200万円未満の方の場合は、10万円の代わりに総所得金額等の5%の金額をつかいます。

総所得金額等が100万円で、その年の医療費が8万円のケース
総所得金額等が200万円未満です。
100万円 × 5% = 5万円が足切り金額となるので、
8万円 - 5万円 = 3万円が医療費控除の金額になります。

総所得金額等が300万円で、その年の医療費が8万円のケース
総所得金額が200万円以上です。
医療費8万円は足切り金額の10万円より少ないため、医療費控除できる金額はゼロになります。

 

総所得金額等

総所得金額等につきましては、「総所得金額等とは」を参照してください。

 

年をまたぐ医療費の支払いに注意

年をまたいで治療を行ったときは、それぞれの年に支払った医療費が、それぞれの年において医療費控除の対象になります。そのため、入院などで年末年始にかけて医療費の支払いがある場合は、病院に相談して支払日を調整してもらうと節税になります。
年間の医療費が10万円を超えるように支払う年をなるべく合わせるようにする、どちらの年でも10万円を超えそうなら所得が高い年に医療費の支払いを合わせるなどの調整が節税につながります。また、単年の治療費が医療費控除の上限である210万円を超えるようなら翌年の支払いにしてもらうと、ムダがありません。

 

自分の分だけでなく家族の分も

本人だけでなく家計が同じ家族の医療費は、医療費控除の対象になります。よって自分と家族の医療費を合計して10万円を超えていれば医療費控除を受けることができます。
また、夫婦共働きの場合は、家族の医療費の合計を、夫の所得から医療費控除しても、妻の所得から医療費控除をしてもどちらでもOKですが、所得の高い方から医療費控除を受けた方が節税になります。

 

医療費控除を受けるには

医療費控除を受けるには、確定申告する必要があります。確定申告書に医療費控除に関する事項を書いて、医療費の支出が分かる領収書などを添付するか提示してください。
健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」は、医療費控除を受けるときの領収書の代わりにはならないので注意してください。
会社勤めの方など給与所得のある方は、会社からもらった給与所得の源泉徴収票の原本も合わせて添付してください。

 

その他の所得控除

その他の所得控除につきましては、下表のリンク先のページを参照ください。

所得控除の名称 詳細を開設したリンク先
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おわりに

医療費控除の対象となる医療費の範囲はけっこう広いですね。
そのつど管理するのは面倒なので、とりあえず1年間(1月1日~12月31日)、自分と家族の医療費になりそうな領収書を1つの封筒などにまとめてつっこんでおきましょう。もしかしたら10万円超えて節税になるかもしれません。

次回、医療費控除とは?医療費の範囲はけっこう広いです2では、入院関連、出産関連、歯の治療関連、人間ドック健康診断、眼科の治療関連のケース別に、医療費控除の対象になるのか、ならないのかをまとめてみます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。