国際課税の基礎-8-移転価格税制

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回は移転価格税制について説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

移転価格税制の意義

日本の会社が国外関連者と取引を行う場合、その取引価格を操作して、国外関連者以外の第三者との取引価格と異なる価格設定をすることが可能です。

ここで国外関連者とは、海外にある親会社や子会社、兄弟会社など、その日本の法人と関連がある外国法人のことをいいます。

 

例えば、日本の親会社が海外の子会社に商品を売るときに、通常価格から大きく割引する場合を考えてみます。

日本の親会社が海外の子会社に通常価格で商品を売っていたら、日本の親会社に通常の利益が出て、日本で税金を払います。海外子会社も通常の利益が出て、外国に税金を払います。

日本の親会社が海外の子会社に割引価格で商品を売ってしまうと、日本の親会社の利益が減って、日本で払う税金が少なくなってしまいます。一方、海外子会社の利益は増えて、外国で払う税金も増えることになります。日本は税収が減って困りますね。

日本の親会社が海外の子会社に割高な価格で商品を売ってしまうと、日本の親会社の利益は増えて、日本で払う税金が多くなります。一方、海外子会社の利益は減って、外国で払う税金も減ることになります。その外国は税収が減って困りますね。

 

このように、取引価格を操作することによって利益を国外に移転させて、税金を不当に減らすことを防ぐために、日本や各国では移転価格税制を導入しています。

 

 

移転価格税制とは

取引価格を操作することによって利益を日本から国外に移転させて、日本の税金を不当に減らすことを防ぐために、日本の法人と国外関連者との間の取引については、独立企業間価格(Arm’s Length Price)といわれる、適正な取引価格で行ったものとみなして、所得(税金上の利益)を計算して税金をかけるものとしています。これを移転価格税制といいます。

繰り返しになりますが、国外関連者とは、海外にある親会社や子会社、兄弟会社など、その日本の法人と関連がある外国法人のことをいいます。

独立企業間価格とは、第三者との間の取引において、通常決められるであろう取引価格のことをいいます。

 

 

移転価格税制の数値例

移転価格税制を具体的な数値を使って説明します。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した移転価格税制

日本の会社であるA社は、商品(50)を仕入れて、海外子会社であるB社に対して、独立企業間価格(100)より小さい金額(70)で商品を販売しています。A社の利益は(70-50=20)になります。

A社がB社に対して、独立企業間価格(100)で商品を販売していれば、A社の利益は(100-50=50)になります。

 

このように、A社は国外関連者であるB社との取引にあたって、独立企業間価格よりも小さい価格で取引を行ったことによって、独立企業間価格で取引を行っていれば得られたであろう利益(50)のうち(30)がB社に移転してしまい、移転してしまった利益(30)については日本で税金をかけられなくなってしまいます。

それを防ぐために、移転価格税制を適用して、A社とB社との間の取引は独立企業間価格で行われたものとして利益を計算して、利益(50)に対して日本で税金をかけることができるようにします。

 

この場合、A社の利益(30)については、日本とB社の所在する国の2国において二重に税金がかかってしまうことになります。この二重課税を排除するために、A社は日本の国税庁に対して相互協議を申請して、B社の所在する国の税金を減らしてもらうように、B社の所在する国と協議してもらいます。

 

 

移転価格税制の対象

日本の移転価格税制では、
日本の会社が国外関連者から支払いを受ける金額が独立企業間価格に比べて小さい場合と、
日本の会社が国外関連者に支払う金額が独立企業間価格に比べて大きい場合
が対象になります。

 

その逆である、
日本の会社が国外関連者から支払いを受ける金額が独立企業間価格に比べて大きい場合と、
日本の会社が国外関連者に支払う金額が独立企業間価格に比べて小さい場合
については日本の移転価格税制の対象にはなりません。この場合は日本の税収は増えることになるからです。ただし、国外関連者がある国において移転価格税制が適用される可能性はあります。

 

このように移転価格税制とは、国と国との税金の取り合いを調整する制度ともいえるのです。

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。