短期前払費用で節税になる?(フリーランス・個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、短期前払費用といわれる、費用を前払いして節税する方法について解説したいと思います。

 

短期前払費用による節税が使われる場面

フリーランス・個人事業主の方は11月、法人の方は決算月の前月、今期の業績が固まってきたあたりでしょうか。あなたは、「今年はちょっともうかり過ぎちゃったなあ。来年以降も順調に行きそうだけど、なんか節税できないかなあ」と思案しているところです。こんな時によく使われるのが、短期前払費用による節税です。

 

前払費用とは

前払費用とは、契約で継続的にサービスを受けるための支出のうち、まだサービスを受けていない分に対応する支出のことをいいます。この前払費用は、支出した時に資産として計上しなければならず、すぐには必要経費・損金になりません。実際にサービスを受けた時点で、必要経費や損金になります。

例えば、4月分の事務所家賃を3月に払った場合などが該当します。4月分の事務所家賃なので、3月の家賃支払い時にはまだサービスを受けていません。この4月分の事務所家賃は、3月の家賃支払い時には、必要経費・損金にするのではなく、前払費用という資産として計上することになります。そして、4月になったら、前払費用から必要経費・損金に振り替えられるのです。

 

短期前払費用の特例

短期前払費用の特例とは、上記の前払費用のうち、下の2つ両方に当てはまるものについては、資産に計上しないで支払った時の必要経費・損金にしていいですよ、という特例です。

  • 支払った日から1年以内にサービスを受ける
  • この1年限りではなく今後は毎年継続して前払いする

必要経費・損金にできるということは、その分だけ所得を減らすことができ、税金が安くなるので節税になります。

支払った日から1年以内にサービスを受けるものでないといけないので、2月に4月~3月の1年分を前払いするような場合は該当しません。2月に3月~2月の1年分を前払いする場合ならOKです。

この1年限りではなく今後は毎年継続して前払いする必要があるので、今年の3月に4月~3月の1年分の前払いをしたならば、来年の3月になったらまた4月~3月の1年分の前払いをしなけらばなりません。

短期前払費用に使われる有名なものに保険があります。保険会社さんも、もちろんこの制度を知っているので、節税商品として決算月近くになると営業にも力を入れています。

 

短期前払費用を使った節税の注意ポイント

3月決算の会社が4月から3月まで12ヶ月分の保険料を支払っている場合に、この短期前払費用を使った節税を行えば、プラスでもう12ヶ月分の保険料が今年の必要経費・損金になります。今年に24ヶ月分の保険料を必要経費・損金にすることができるのです。

しかし、もともとは来年支払って来年の必要経費・損金になるはずの保険料を今年に前払いしたに過ぎません。つまり、本来なら支払わなければならなかった税金の支払いを将来に延ばしたに過ぎないのです。今年の税金が減るか、来年の税金が減るかの違いでしかありません。支払いが先延ばしになるのは良いことですが、税金の支払いが先延ばしになる額以上に、費用の前払いとして先に出て行くキャッシュの方が大きいです。適用初年度には確かに節税効果がありますので、その点を理解して、この節税策を利用してください。

短期前払費用の節税は、来年以降も継続して適用しなければならないので資金繰りの問題も出てくるでしょう。毎年の決算月に1年分の費用をまとめて支払うのは大変です。資金繰りの鉄則は、高い利払いなどがなければ、なるべく分割して払って一回の支払い額を減らすことです。

また、必要ないのに節税のために新しく保険に入ることなどは、本末転倒です。多少税金を払ってでも手もとにキャッシュを残しておきましょう。

短期前払費用を使った節税は有名なので、節税策として提案してくれる税理士さんも多いと思います。
でも、私のお客様にはあまりオススメしていません。上で書いたとおり、この2つの理由、とくに2つ目の理由からです。

  • 税金の支払いのタイミングを動かすだけに過ぎない、税金を減らすのではなく繰り延べるだけ
  • 来年以降も前払いを続けないといけないけど、来年以降のことなんてどうなるか分からない

どうしても、短期前払費用を使って今年の税金を減らしたいとお考えの場合は、

  • 事務所家賃など高額になるものは避けましょう
  • 少額で、かつ、本当に必要なものにしましょう

例えば、すでに入っている少額の保険なんていいですね。1年分を前納すれば保険料の割引を受けることもできますし。

しかし、税率の分岐点を考えて短期前払費用での節税をお客様に提案することはあります。所得が大きく税率が高いときの税金の支払いを先延ばしして、所得が小さく税率が低いときに税金を払うように調整すれば、有効な節税となるからです。フリーランス・個人事業主の所得税は所得が多いほど税率が高くなっており、中小企業の法人の場合も、所得額によって法人税の税率が2種類あります。

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。