小規模企業共済で節税(フリーランス・個人事業主、法人の役員)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、小規模企業共済による節税をご紹介します。

 

 

小規模企業共済の概要

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主の方、中小企業の役員の方のみが加入することができる、国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している公的な退職金の共済制度です。個人事業を廃業したときや会社の役員を退職したときなどに、毎月掛け金として積み立てていたものを受け取ることができます。

 

 

掛け金を支払った時の節税メリット

小規模起業共済の掛け金は、毎月1,000円から7万円まで自由に設定でき、掛け金を変更して増減させることも可能です。掛け金は予定利率1.0%で運用されます。平成17年から平成24年の8年間における運用利回りの幾何平均は1.77%となっています。単純に利回りだけを見ると、他に魅力的な金融商品はたくさんあるでしょう。

しかし、小規模企業共済の最大のメリットは大きな節税効果にあります。それは、掛け金の全額を個人の所得から控除できる点です。所得から控除できるということは、それだけ所得が減ることになるため、その結果税金が安くなります。

なお、会社から掛け金を払うことはできないため、会社役員の方の場合は、契約者である自分自身の収入から掛け金を支払って、自分個人の所得から控除します。

支払い時の節税について詳しくは、「小規模企業共済等掛金控除とは?確定拠出年金と比べて」を参照ください。

 

小規模企業共済による節税額の試算

どれだけ税金(所得税+復興特別所得税+住民税)が安くなるかを試算してみました。

税額は平成25年1月1日現在の税率に基づいて、所得税には復興特別所得税を含めており、住民税均等割は4,000円として試算しています。

課税所得が200万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 2,400円 9,600円
5,000円 60,000円 11,600円 48,400円
10,000円 120,000円 20,700円 99,300円
30,000円 360,000円 56,900円 303,100円
50,000円 600,000円 93,200円 506,800円
70,000円 840,000円 129,400円 710,600円

 

課税所得が500万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 3,700円 8,300円
5,000円 60,000円 18,300円 41,700円
10,000円 120,000円 36,500円 83,500円
30,000円 360,000円 109,500円 250,500円
50,000円 600,000円 182,500円 417,500円
70,000円 840,000円 255,600円 584,400円

 

課税所得が1,000万円の場合
毎月の掛金 掛金の年額 節税額 実質負担額
1,000円 12,000円 5,200円 6,800円
5,000円 60,000円 26,200円 33,800円
10,000円 120,000円 52,400円 67,600円
30,000円 360,000円 157,300円 202,700円
50,000円 600,000円 262,200円 337,800円
70,000円 840,000円 367,000円 473,000円

課税所得が1,000万円の人が毎月の掛け金を7万円で年間84万円を支払った場合、節税額が36.7万円となり、掛け金の実質負担額は47.3万円になります。つまり47.3万円の掛け金で84万円を積み立てたことになるのです。掛け金拠出年度の利回りはスゴいですね。

 

 

共済金を受け取った(解約した)時の節税メリット

小規模企業共済の掛け金は積み立てられ運用されます。そして廃業した時や退職した時、事業を譲渡した時などに共済金として受け取ることができます。受け取り方法は、一括して受け取ることはもちろん、年金のように分割して受け取ったり、その2つを併用して受け取ることも選択できます。掛け金の納付期間が5年以上であれば、受け取る共済金は払い込んだ掛け金を上回ります。一括で受け取る場合は、退職所得として扱われるため、税金が優遇されます。分割で受け取る場合は、公的年金等の雑所得として扱われるため、こちらも税金が優遇されます。

節税メリットが大きいのは、退職所得として一括で共済金を受け取る場合です。

 

 

具体的な計算例で見てみましょう。

例えば、35歳から65歳まで毎月4万円の掛け金を払い込み、年利1%で運用したとすると、65歳で受け取る共済金は約1,686万円になります。

 

 

退職所得控除の金額

退職所得控除の金額は以下のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下の場合 40万円×勤続年数
20年を超える場合 800万円+(勤続年数-20年)×70万円

(30年-20年)×70万円+800万円=1,500万円

 

 

退職所得の金額

退職所得の金額は以下のように計算します。

退職所得=(退職金-退職所得控除)×1/2
(1,686万円-1,500万円)×1/2=93万円

1,686万円受け取ったのに、93万円にしか税金がかからないことになります。

このように退職所得として受け取ると、非常に大きな節税効果が得ることができるのです。

 

 

月1,000円からでもいいので加入しよう

起業したばかりで、掛け金に回せるお金なんてないよ、という方も多いと思います。その場合は、月1,000円の掛け金でスタートして、事業か軌道に乗ってきたら増額させましょう。小規模企業共済は、加入期間が長ければ長いほど、共済金を受け取るときの節税メリットが大きくなりますので。事業と同じで小さく生んで大きく育てましょう。

 

 

元がとれるのはいつから?

小規模企業共済は、掛け金を12ヶ月(1年)以上払い込んでいれば理由を問わずいつでも解約して解約手当金を受け取ることができます。ただし、掛け金の納付期間が240ヶ月(20年)未満だと、解約手当金の額が払い込んだ掛け金より少なってしまいます。共済金の場合は5年で掛け金を上回りますが、解約手当金の場合は20年以上でないと掛け金を下回ってしまうので注意してください。

 

 

まとめ

小規模企業共済は、掛け金を支払うときも、共済金を受け取るときも節税メリットがあります。フリーランス、個人事業主、会社を設立して代表になった場合などを問わず、起業したら、毎月の掛け金は最低額の1,000円でもかまわないので、とりあえず小規模企業共済に加入しましょう。

 

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。