非上場株式の譲渡 | 個人(売主)から法人(買主)の場合

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区や渋谷、新宿など東京23区のベンチャー企業や起業家様を支援している公認会計士・税理士が会計や税金、節税について解説します。

今回は、個人(売主)から法人(買主)への非上場株式の譲渡を行う場合の税務上の考え方について説明したいと思います。

 

個人(売主)から個人(買主)への非上場株式の譲渡についてはこちら
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3つの価額を明らかにする

非上場株式の譲渡を行う場合は、次の3つの価額を明らかにする必要があります。

  • 取得価額 ( 売主が取得した際の価額 )
  • 時価 ( 評価額、あるべき価額 )
  • 譲渡価額 ( 実際に取引を行う際の価額 )

このうち、悩むのが時価です。

上場株式のように取引所相場による明確な時価があればいいのですが、非上場株式の場合はこちらで評価する必要があります。

 

個人から法人への非上場株式の譲渡においては、次の通達等に基いて時価を算定します。

  • 所得税法基本通達59-6 ( 株式等を贈与等した場合の「その時における価額」 )
  • 財産評価基本通達
  • 所得税法第59条 ( 贈与等の場合の譲渡所得等の特例 )
  • 所得税法施行令第169条 ( 時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲 )
  • 所得税法基本通達59-3 ( 同族会社等に対する低額譲渡 )

 

そして、譲渡価額によって次の3つの取引に分けて考えます。

  1. 時価による譲渡 ( 時価 = 譲渡価額 )
  2. 時価より低い価額による譲渡 ( 時価 > 譲渡価額 )
  3. 時価より高い価額による譲渡 ( 時価 < 譲渡価額 )

 

 

1. 時価による譲渡

非上場株式の譲渡を時価で行った場合、すなわち譲渡価額=時価の場合は次のようになります。

  • 取得価額(100円)
  • 時価(1,000円)
  • 譲渡価額(1,000円)

 

売主(個人)

譲渡価額(1,000円) - 取得価額(100円) = 譲渡所得(900円)
売主(個人)には、もうけである譲渡所得(900円)に対して、所得税等がかかります。

 

買主(法人)

買主(法人)については、課税関係は発生しません。

 

 

2. 時価より低い価額による譲渡

非上場株式の譲渡を時価より低い価額で行った場合は次のようになります。

  • 取得価額(100円)
  • 時価(1,000円)
  • 譲渡価額(300円)

 

売主(個人)

譲渡価額(300円) - 取得価額(100円) = 譲渡所得(200円)
売主(個人)には、もうけである譲渡所得(200円)に対して、所得税等がかかります。

譲渡価額(300円)が時価(1,000円)の1/2未満であるため、譲渡価額(300円)と時価(1,000円)の差額についても、みなし譲渡所得として所得税等がかかります。
時価(1,000円) - 譲渡価額(300円) = みなし譲渡所得(700円)

譲渡価額が時価の1/2以上であっても、同族会社への譲渡の場合は、上記と同様に譲渡価額と時価の差額について、みなし譲渡所得として所得税等がかかる場合があります。

また、譲渡価額と資本金等の額の金額によっては、譲渡所得ではなく、みなし配当として配当所得となる場合があります。

 

買主(法人)

時価(1,000円) - 譲渡価額(300円) = 受贈益(700円)

時価よりも低い価額で非上場株式を買った場合は、時価と譲渡価額の差額(受贈益700円)に対して、買主(法人)が売主(個人)から贈与を受けたものとして、買主(法人)では受贈益として法人税等が課税されます。

自己株式を取得した場合は、原則としてその受贈益に法人税等はかかりません(かかる場合もあります)。
自己株式の取得について、みなし配当に該当する部分がある場合は、そのみなし配当について源泉徴収義務が生じるので注意して下さい。

 

 

3. 時価より高い価額による譲渡

非上場株式の譲渡を時価より高い価額で行った場合は次のようになります。

  • 取得価額(100円)
  • 時価(1,000円)
  • 譲渡価額(3,000円)

 

売主(個人)

譲渡価額(3,000円) - 時価(1,000円) = 贈与財産(2,000円)

時価よりも高い価額で非上場株式を売った場合は、譲渡価額と時価の差額(2,000円)について、一時所得として所得税等が課税されます。
売主(個人)が買主(法人)の役員や従業員などの場合は、一時所得ではなく給与所得として所得税等が課税されます。

時価(1,000円) - 取得価額(100円) = 譲渡所得(900円)
売主(個人)には、上記に加えて、時価によるもうけ部分である譲渡所得(900円)に対して、譲渡所得として所得税等がかかります。
また、時価と資本金等の額の金額によっては、譲渡所得ではなく、みなし配当として配当所得となる場合があります。

 

買主(法人)

譲渡価額(3,000円) - 時価(1,000円) = 寄付金(2,000円)

時価よりも高い価額で非上場株式を買った場合は、譲渡価額と時価の差額(2,000円)が寄付金とみなされ、寄付金課税の適用を受けます。

売主(個人)が買主(法人)の役員の場合は、譲渡価額と時価の差額(2,000円)が役員賞与になり、損金不算入の適用を受けます。

売主(個人)が買主(法人)の従業員の場合は、譲渡価額と時価の差額(2,000円)が賞与になります。

自己株式の取得について、みなし配当に該当する部分がある場合は、そのみなし配当について源泉徴収義務が生じるので注意して下さい。

 

 

おわりに

港区や渋谷、新宿など東京23区で、会社を退職して起業をお考えの方や起業して日が浅い方がいらしたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。会計や節税だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い公認会計士・税理士が、あなたの事業が持続的に成長するお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。