事業主貸と事業主借とは | フリーランス・個人事業主の経理

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

公認会計士・税理士として、港区や渋谷区、新宿区といった東京23区の起業家様、経営者様を支援してきた経験から、フリーランス・個人事業主の方の経理のポイントについて解説します。

今回は、個人事業主特有の勘定科目である 「 事業主貸 」 と 「 事業主借 」 について説明したいと思います。

 

 

事業主貸と事業主借

事業に関係して支払った事業経費と
事業には関係しない私的な支出である生活費を
区別して管理することは、フリーランス・個人事業主の方の経理においてとても大切です。

事業経費と生活費の区別については、下記のページを参照ください。
事業経費と生活費の区分管理方法 | フリーランス・個人事業主の経理

事業経費と生活費を完全に分けることが理想ですが、事業を進めていくと
事業用のお金で私用のモノを買ってしまった
事業用のお金の手持ちがなかったので、生活用の財布から事業経費を支払った
などといったことが避けられないと思います。

そんな、事業とプライベートの間のお金の流れを経理処理するのに使う勘定科目が、「事業主貸」と「事業主借」です。

なお、株式会社などの法人の場合は、「事業主貸」と「事業主借」は出てきません。「事業主貸」と「事業主借」は、事業とプライベートの境界が法的に区別されていないフリーランス・個人事業主の特有な勘定科目になります。

 

 

事業主貸とは

事業主貸とは、フリーランス・個人事業主が、事業用のお金を生活費などプラーベートなものに使ったときに用いられる勘定科目です。フリーランス・個人事業主の場合は、給料という概念がないため、事業で稼いだお金を生活費にまわす場合も、この事業主貸を使います。

お金に限らず事業の資産が個人事業主本人に渡ったときは事業主貸になります。

事業用のお金を事業主に ”貸した” ように見えるから、事業主”貸”になると覚えてください。

なお、この事業主貸は、事業のために支出したものではないので必要経費にはなりません。プライベートな支出をたくさんして事業主貸を増やしても節税にはならないので注意してくださいね。

 

 

事業主貸を使う例

事業主貸を使う場面と、そのときの経理処理(仕訳)を例示します。

事業用のお金から、私用の飲食費3,000円を支払った。
事業主貸 3,000円 / 現金 3,000円

事業用の銀行口座から生活費として10万円を引き出した。
事業主貸 100,000円 / 普通預金 100,000円

事業用の銀行口座から国民健康保険料と国民年金を合わせて5万円払った。
事業主貸 50,000円 / 普通預金 50,000円
自分の社会保険料は、事業における必要経費になりません。

事業用の銀行口座から所得税を1,000,000円納めた。
事業主貸 1,000,000円 / 普通預金 1,000,000円
所得税は、事業における必要経費にはなりません。

事業用の銀行口座から自宅兼事務所の家賃として200,000円を支払った。なお、自宅兼事務所の家賃については、自宅部分70%、事務所部分30%に按分している。
家賃 200,000円 / 普通預金 200,000円
事業主貸 140,000円 / 家賃 140,000円

 

 

事業主借とは

事業主借とは、フリーランス・個人事業主が、プライベート用のお金を事業に関する支出に使ったときに用いられる勘定科目です。事業資金が減ってきたので、個人事業主本人のお金を事業用に充当する場合なども事業主借になります。

お金に限らず事業に関係しない個人事業主本人の資産が事業用に渡ったときは事業主借になります。

事業用のお金を事業主から ”借りた” ように見えるから、事業主”借”になると覚えてください。

 

 

事業主借を使う例

事業主借を使う場面と、そのときの経理処理(仕訳)を例示します。

プライベートの財布から、事業用のタクシー代2,000円を支払った。
交通費 2,000円 / 事業主借 2,000円

事業用の銀行口座の残高が減ってきたので、事業主個人の預金口座から事業用の口座へ100,000円の送金を行った。
普通預金 100,000円 / 事業主借 100,000円

事業用の銀行口座に240円(手取り金額)の利息が付いていた。
普通預金 240円 / 事業主借 240円
紛らわしいですが、事業用の口座に付いた利息は事業の収益(事業所得)にはならずに、利子所得になります。そのため、受取利息勘定ではなく事業主借で処理して、事業の収益には含めないようにします。

 

 

確定申告における事業主貸と事業主借

確定申告においては
事業主貸は個人事業における資産として
事業主借は個人事業における負債として
そのまま貸借対照表に計上されます。

そして、翌年の始めに事業主貸と事業主借を相殺して、残額分だけ元入金(個人事業の資本金に当たるもの)を増減させます。事業主貸と事業主借は年始めに元入金に反映されるので、年始めはゼロからまたスタートすることになります。

 

年始めの経理処理

事業主貸と事業主借の残額を相殺する
事業主貸の方が多い場合は、相殺後の残額だけ元入金を減らす。
事業主借の方が多い場合は、相殺後の残額だけ元入金を増やす。

 

年始めの元入金の計算方法

今年スタート時点の元入金=前年末時点の元入金+前年の青色申告特別控除前の所得金額-事業主貸+事業主借

 

 

おわりに

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で、フリーランス・個人事業主として起業・開業して間もない方、これから起業・開業をお考えの方がいらしたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金だけでなく、ビジネスやファイナンスに強い若手の公認会計士・税理士が、あなたの事業の持続的な発展のお手伝いをさせて頂きます。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。