節税と現在価値-支払いを将来に繰り延べるだけの節税も意味があります

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

節税とファイナンス用語の現在価値、一見するとあまり関係がないように思えますが、実はけっこう関係があります。

今回は、そんな節税と現在価値の関係について説明したいと思います。

 

支払いを将来に繰り延べるだけの節税

節税には、税金の額を減らすのではなく、税金の支払いを将来に繰り延べるだけに過ぎない節税というものが多くあります。税金の額を減らすものではないので、この手の節税には意味が無いという税理士さんもいらっしゃいます。

100万円の税金の支払いを50万円に減らしました。これは立派な節税ですね。

100万円の税金の支払いを1年後に繰り延べました。これは節税と言えるのでしょうか。

 

繰り延べるだけの節税も現在価値で考える

私は、支払いを将来に繰り延べるだけの節税についても、現在価値で考えると意味があると思っています。

現在価値については「1年後に100万円もらうよりも今100万円欲しい-現在価値」を参照ください。

現在価値で考えると、現在の100万円の税金の支払いよりも、1年後の100万円の税金の支払いの方が少なくて済みます。1年後ではなく5年後、10年後で考えるとその影響額はもっと大きくなります。

割引率を10%と仮定して試算してみたのが下表です。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した節税現在価値の図

現在の100万円の税金を1年後に繰り延べると現在価値にして91万円、5年後に繰り延べると現在価値にして62万円、10年後に繰り延べると現在価値にして39万円になるのです。

起業して間もないフリーランスや個人事業主、中小企業やベンチャー企業であれば割引率はもっと高くなると思うので、その影響額はさらに大きくなるでしょう。

 

繰り延べるだけの節税と資金繰り

支払いを将来に繰り延べるだけの節税については、現在価値で考えなくても意味はあります。それは資金繰りです。資金繰りの基本は、受け取るお金はなるべく早く、支払うお金はなるべく遅くです。同じ税金の支払いなら先延ばしにしたほうが、資金繰りは楽になりますね。

 

おわりに

支払いを将来に繰り延べるだけの節税について、

  • 特に何も考えずに実行するのが普通の税理士です。
  • 税金の額が減るわけではないことを顧客に説明して実行するのが良い税理士です。
  • 税金の額が減るわけではないが、メリットがちゃんとあることを顧客に説明して実行するのがさらに良い税理士です。

現在価値の概念について、公認会計士は退職給付引当金の検証など仕事で使う場面が多いので知っていますが、税理士にはなかなか馴染みがないと思います。節税だけでなく、このようなコーポレートファイナンスの相談もしたい場合は税理士よりも公認会計士の方が合っているかもしれません。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。