未払費用・未払金で節税(フリーランス・個人事業主、法人)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

今回は、未払いになっている費用を集める、すなわち未払費用未払金を計上して節税する方法について解説したいと思います。

 

未払費用・未払金による節税が有効な場面

フリーランス・個人事業主の方は年明けの1月、法人の方は決算日を過ぎて新しい年度がスタートしたあたり。あなたは、「決算日を過ぎてしまったけど、今からできる節税って何かないかなあ」と思案しているところです。こんな時に有効なのが、未払費用・未払金による節税です。

 

未払費用とは

未払費用について、企業会計原則ではこのように定義されています。

「未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対して、いまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。」

パッと見では何を言っているのか分かりにくいですね。

簡単にいうと

  • 1回こっきりのサービスで「はい、終了」ではなく、継続してサービスを受ける契約になっている。具体的には事務所家賃や水道光熱費、新聞代、電話代、保険料、プロバイダ代などが当てはまります。
  • すでにサービスを受けたんだけど、まだ支払いが済んでいなく未払いとなっている。具体的には、3月分の料金は4月に払うことになっているので、3月時点では未払いになっているものなどが当てはまります。

この2つ両方に当てはまるものが未払費用になります。

 

未払金とは

未払金とは、下の2つ両方に当てはまるものをいいます。

  • すでにサービスを受けたんだけど、まだ支払いが済んでいなく未払いとなっている(未払費用と同じ)
  • 1回こっきりのサービスで「はい、終了」となるもの(未払費用と違う点)。具体的には、3月にクレジットカードでパソコンを買ったけど、その引き落としは4月になる場合などが当てはまります。

 

未払費用と未払金の区別が難しい

未払費用と未払金の区別が難しい、というお話をよく聞きますが、あまり深く考えなくてもいいですよ。どっちを使っていただいても構いません。大切なのは毎回同じ方法で処理することです。継続性が重要なんです。

例えば事務所家賃の未払い分について、去年は未払費用を使ったけど今年は未払金にしよう、っていうのは問題です。未払費用でも未払金でもどちらを使ってもいいので、事務所家賃についてはこっち、という風に決めてしまって、あとはその方法を継続すれば問題ありません。

 

未払費用・未払金を計上するとなんで節税になるのか

未払費用・未払金を計上するとなんで節税になるのかというと、必要経費・損金にできるからです。普通は決算日までに支払いがされていなければ必要経費・損金にできませんが、下記の3つの要件に当てはまるときは、未払いであっても債務が確定しているものとして必要経費・損金にすることができるのです。

  • 決算日までに受けたサービスについての支払い債務が成立している
  • 決算日までにこの支払い債務に基づいてサービスを受けている
  • 決算日までに支払わないといけない債務の金額を計算できる

必要経費・損金にできるということは、その分だけ所得を減らすことができ、税金が安くなるので節税になります。

この節税テクニックの良いところは、決算日を過ぎてからでも活用できるところです。一般的な節税は、決算日までに実行しないといけないものが多いので。

税理士と相談しながら、未払費用・未払金として計上できるものがないか、決算日が過ぎてから送られてきた請求書や領収書、決算日後の通帳などをチェックしてみましょう。

 

未払費用・未払金を使った節税の注意ポイント

未払費用・未払金を使った節税は、税金の絶対額を減らすのではなく、税金の支払いを先延ばしするに過ぎません。今年の税金は減りますが来年の税金は増えます。
通常ならば来年に必要経費・損金とするつもりであった支払いを、今期に先取りして未払費用・未払金として必要経費・損金に計上するのです。
このことを理解して、この節税テクニックを使用してくださいね。

ただ、単なる支払いの先延ばしといっても、支払いが後ろに行けば行くほど資金繰りは楽になります。未払費用・未払金の活用には節税の効果がないといっても、資金繰り的には有効ですし、なにより追加のキャッシュアウトを必要としないお手軽さがあるので、私はオススメします。

所得が大きく税率が高いときの税金の支払いを先延ばしして、所得が小さく税率が低いときに税金を払うように調整すれば、税金の支払いの先延ばしも有効な節税になります。フリーランス・個人事業主の所得税は所得が多いほど税率が高くなっており、中小企業の法人の場合も、所得額によって法人税の税率が2種類あります。

税理士と一緒に来年の事業計画を作って精度の高い利益見込を見積もることができると、より効果的に節税をすることができます。

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。