決算賞与で節税するメリット・デメリット

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

決算日ギリギリでもできる節税策として、税理士の間では有名な、決算賞与を使った節税があります。この決算賞与を使った節税はメリットだけが大きく取り上げられますが、デメリットがあることを知らない税理士さんもけっこういらっしゃいます。

今回は、そんな決算賞与を使った節税について、メリットだけでなくデメリットも解説したいと思います。

 

決算賞与

決算月に従業員に賞与を支給すればフリーランス・個人事業主の必要経費、株式会社など法人の損金にすることができます。必要経費や損金にできると、それだけ所得が減ることになるので、その結果税金が安くなり節税になります。

今年は予想以上に儲かってしまったから、なんとか節税したい。でもすでに決算日も迫っているので節税対策を打つ時間がない。よし、税金を払うくらいなら決算賞与として従業員に支給してしまおう、ということができるのです。

 

未払賞与

賞与は基本的には支給した時点で経費にできるので、決算日までに支給せずに未払いになっていると経費にできません。
でも下記の条件を満たした場合は、未払いとなっていても経費にできるのです。

  • 決算日までに、同時期に賞与が支給される全ての従業員に対して、賞与の支給額を各従業員に通知している
  • 上記の各従業員に通知をした賞与の金額を、通知した全ての従業員に対して、決算日の翌月末までに支払っている
  • 支給した日ではなく、通知をした日の属する事業年度において、損金経理している

 

未払賞与の注意点

各従業員ごとに各従業員に対する支給額を通知しないといけないので、賞与として会社全体でこれだけ支給する、といった通知では認められません。
全従業員に通知しないといけないので、一部の従業員に未通知となることは認められません。
決算日までに通知した証拠を残すために、日付と支給金額が記載された賞与通知を全従業員に交付して、その控えを保管しておくといいと思います。

決算日の翌月末までに、全ての従業員に全額を支給しないといけないので、一部が未払いのままとなっている場合は認められません。
決算日の翌月末までに、全ての従業員に全額を支給した証拠を残しておきましょう。銀行振込なら通帳を確認すれば分かるので問題ありませんが、現金払いの場合は、従業員に領収書を書いて提出してもらう必要があります。

賞与を未払いで計上する場合は、注意しなければいけない細かなポイントもあるので税理士に相談すると良いと思います。

 

未払賞与が役立つケース

決算日まであと1週間、決算賞与を支給して節税したいけど、決算賞与を払う現金が手もとにない、来月になれば売掛金の入金があるのだけど・・・こんな場合に未払決算賞与が役立ちますね。

また、決算月はなにかと支出が多くなるので、資金繰りに余裕を持たせるためにも、決算賞与は決算月に支給するのではなく、決算月の翌月に支給することをオススメします。

 

決算賞与のメリット

決算賞与のメリットとしてまずあげられるのが、上にも記載のとおり決算直前の節税対策として行える点です。
あとよく言われるのが、もうかった利益を従業員に還元することで、従業員のモチベーションが上がるということです。

 

決算賞与のデメリット

決算賞与を支給することで従業員のモチベーションが上がることをメリットとしてあげましたが、もし来年以降思ったほど儲からず決算賞与の額が下がってしまった、もしくは支給できなくなったらどうなるでしょう。

従業員のモチベーションは下がるでしょう。

上がったモチベーションと同じ分だけ下がるのであればまだいいのですが、一般的にはそうはなりません。人は得よりも損を大きく感じやすいため、上がったモチベーション以上にモチベーションが下がってしまうと言われています。

これでは決算賞与を支給することで、逆にモチベーションが下がってしまうことになります。

モチベーションを維持向上させるには、毎年決算賞与を支給し続ける、しかもその支給額は毎年上がり続けなければなりません。これは非常に大きなプレッシャーですよね。

 

手もとに残る現金

決算賞与を支給して節税された場合よりも、決算賞与を支給せずに税金を払った場合の方が、手もとには多くの現金が残ります。

法定実効税率を40%とします。
利益(所得)が500万円で、このままだと税金として200万円納めることになります。税金を納めると手もとには300万円残ります。
そこで、総額500万円の決算賞与を支給することで、利益(所得)はゼロ円、税金もゼロ円になります。税金は200万円安くなりました。しかし手もとには1円も残りません。

どちらが良いと考えるかは人それぞれですが、昔とは異なり不確実性が高い現在においては、多少の税金を払ってでも手もとに現金が残るようにした方が良いのではと私は思います。そのため私のお客様には、このメリットとデメリットを説明したうえで、積極的にはオススメしていません。

 

おわりに

決算賞与はメリット尽くしの節税策ではなく、デメリットもあることを頭に置いておいてくださいね。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。