選択バイアスの罠

はじめに

F16が好きな東京都港区の税理士
こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリテイ、公認会計士・税理士の佐藤です。

統計学の用語で「選択バイアスの罠」というものがあります。今回はこの用語を紹介したいと思います。

 

選択バイアスの罠におちいった有名な事例

選択バイアスの罠におちいった有名な事例です。

ハンガリー生まれのユダヤ人でドイツからアメリカに亡命したエイブラハム・ワルドという統計学者がいました。ワルドは、世界大戦の最中、アメリカ軍の戦闘機の弱い部分について調査しており、戦闘機のどの部分を補強するべきであるか、軍部と検討していました。

そんな彼のもとに、戦地から帰ってきた戦闘機についてのデータが大量に届けられました。このデータは、戦闘機のいくつかの部分について、他よりも多く敵の弾丸を受けていることを示していました。

ここで質問です。戦闘機のどこを補強するべきでしょうか?

軍部の結論はこうでした。
「敵の弾丸を多く受けている部分を補強すべきだ。」

対して、ワルドは声高らかに叫びました。
「それは違う!敵の弾丸を受けていない部分こそ、補強しなければならない!」

ワルドはどのようにしてこのような結論に辿り着いたのでしょうか。

届けられたデータは、戦地から帰ってきた戦闘機に関するものばかりで、撃墜されて帰ってこれなかった戦闘機に関するものがありませんでした。致命傷となる部分に弾丸を受けた戦闘機は帰ってくることはできずに、大事には至らない部分に弾丸を受けた戦闘機は帰ってくることができたと言えます。

そのため、ワルドは「弾丸を多く受けた部分ではなく、弾丸を受けていない部分を補強すべし」と言ったのです。

軍部とワルドの意見の違いは、データの母集団についての正しい理解の違いだったのです。

 

選択バイアスの罠をビジネスに応用

これはビジネス書やビジネスセミナーにも当てはまります。これらの多くは成功事例をもとにしたものが大半であり、失敗事例が欠如しています。ちまたには選択バイアスの罠にハマっている情報があふれています。成功している経営者にはこんな共通点がある、業績が伸びている会社の特徴はこれだ、などなど。これらをそのまま自分に適用するのは危険です。

皆さんも重要な意思決定をする際は、今回ご紹介した選択バイアスの罠を思い出して下さい。母集団の中から偏ったサンプルを選んでいないか、そもそも母集団が間違っていないか、もう一度考えてみて下さい。

ビジネスの当事者が自ら失敗体験を語ってくれることは非常に少ないですが、そんな中、板倉雄一郎さんの「社長失格」という本はオススメです。

 

おわりに

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。