市場販売目的のソフトウェアの会計・経理処理 | IT企業に強い税理士が解説

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

ITやインターネット、ソフトウェア関連企業に強い公認会計士・税理士が、業界に特有な会計処理や経理、税金について解説します。

今回は、ソフトウェアの開発などを行っている会社に欠かせない、市場販売目的のソフトウェアの会計・経理処理について説明したいと思います。

 

 

 

会計上の市場販売目的のソフトウェアの位置づけ

会計上の市場販売目的のソフトウェアの位置づけは、下表のようになります。

IT企業に強い東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した市場販売目的のソフトウェア
研究開発目的以外のソフトウェアのうち、顧客に提供する目的のソフトウェアで不特定多数の顧客に広く販売するソフトウェアになります。

 

 

市場販売目的のソフトウェアの会計・経理処理

不特定多数の顧客に広く販売することが予定される市場販売目的のソフトウェアは、製造業における製品開発とその量産品の製造と大きく変わりません。しかし、その対象がカタチあるモノではなく目に見えないソフトウェアであることから会計上は特別な処理が必要になります。

市場販売目的のソフトウェアについて、会計上はその制作費を2つの工程に分けて次のように処理します。

  • 「最初に製品化された製品マスター」の完成時点までのソフトウェアの制作費は、研究開発費として、発生した会計年度において費用として計上します。
  • 「最初に製品化された製品マスター」の完成後のソフトウェアの制作費は、その内容によって、無形固定資産のソフトウェア、研究開発費、発生時の費用、売上原価、棚卸資産として計上されます。

IT企業に強い東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した市場販売目的のソフトウェアの区分

 

 

「最初に製品化された製品マスター」の完成時点までの制作費

市場販売目的のソフトウェアについて、「最初に製品化された製品マスター」の完成時点までの制作費は、研究開発費として発生した会計年度において費用として計上します。

「最初に製品化された製品マスター」の完成時点とは、次の2つの要件が満たされた場合をいいます。

  • 製品番号をつける、カタログやホームページに載せるなどの方法で、市場で販売する意思を明確に確認することができるようになった時点
  • 機能評価版(β版)に重要なバグ取りや一部機能変更などが終了して、製品が市場で受け入れられるかどうか、他社の製品と比較して競争力があるかなどの検討を行うことができる程度のプロトタイプが完成した時点

 

 

「最初に製品化された製品マスター」の完成後の制作費

「最初に製品化された製品マスター」の完成後のソフトウェアの制作費は、その内容によって売上原価、棚卸資産、無形固定資産のソフトウェア、研究開発費、発生時の費用として計上されます。

 

製品としてのソフトウェアの制作原価

下記のような製品としてのソフトウェアの制作原価は、ソフトウェアの製造原価になります。そのため無形固定資産のソフトウェアではなく、販売した際に売上原価として計上して、在庫については棚卸資産として計上します。

  • ソフトウェアを保存する媒体の費用
    製品マスターの複写に必要なコンピュータ利用などの費用
    製品利用マニュアルや使用説明書などを制作のための費用
    複写した製品マスターを販売用とするための製品表示や包装のための費用
    最初に製品化された製品マスターの完成以降の制作に携わった従業員の人件費

 

製品マスターの機能の改良や強化するための費用

ソフトウェアの操作性の向上など、製品マスターの機能の改良や強化のための費用は、製品マスターの取得原価になるので、無形固定資産のソフトウェアとして計上します。その後減価償却費として徐々に費用化されます。
なお、著しい改良や強化は研究開発費になります。

 

製品マスターの機能の著しい改良や強化のための制作費

いままでの製品マスターとは別の新しいマスターの制作のためのコストとみなされるような著しい改良や強化のための制作費は、研究開発活動とみなされるため、無形固定資産のソフトウェアとして計上するのではなく、研究開発費として費用計上します。

 

ソフトウェアの機能維持のための費用

バグ取りやウィルス防止など、修繕や維持保全のための費用は、無形固定資産のソフトウェアとして計上するのではなく、発生時の費用として計上します。

 

 

おわりに

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。