がん保険 | 法人が加入する保険の経理と税金

はじめに

こんにちは、東京都港区税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

港区や渋谷、新宿など東京23区のベンチャー企業や起業家様を支援している公認会計士・税理士が税金・節税や会計・経理などについて解説します。

今回は、株式会社などの法人が加入する 「がん保険」 に関する経理処理と税金について説明したいと思います。

 

 

 

がん保険とは

がん保険とは、民間の医療保険の一種で、がん(癌)を保障の対象としており、がんと診断された場合、がん治療を受けた場合などに給付金が支払われる保険のことをいいます。

 

医療保険とは、病気やケガの治療、手術や入院のためにかかった医療費について、その金銭的負担を軽減するための保険のことで、公的な医療保険と民間の医療保険の2つがあります。

  • 公的な医療保険には、会社員の健康保険や公務員の共済組合、自営業者の国民健康保険などがあり、すべての国民が何かしらの公的な医療保険に加入しています(国民皆保険)。
  • 民間の医療保険は、上記の公的な医療保険ではまかなうことができない医療費の自己負担分などに備えるためのもので、各人が任意で民間の保険会社の医療保険に加入します。

 

 

法人が加入するがん保険とは

株式会社などの法人が加入するがん保険とは、
法人が保険の契約者になって、社長など会社役員や従業員を被保険者とするがん保険のことをいいます。

 

 

法人が加入するがん保険の税務上の取扱いと経理処理

法人が加入するがん保険の税務上の取扱いと経理処理は、

給付金(保険金)の受取人が、会社なのか被保険者(被保険者の遺族含む)なのか、
解約返戻金が、ない(少額の場合含む)かあるか、
保険期間が、定期なのか終身なのか、
保険料の払込期間が、有期払込みなのか終身払込みなのか、

によって区分されます。

がん保険は医療保険の一種ですが、税務処理においては、がん保険と医療保険では異なりますので注意してください。

 

 

給付金(保険金)の受取人が会社の場合

 

保険期間が定期の場合

保険期間が定期の場合は、
原則として支払った保険料は保険期間の経過に応じて会社の損金(支払保険料)になります。

 

保険期間が終身で、保険料の支払いも終身払込みの場合

保険期間が終身で、保険料の支払いも終身払込みの場合は、
がん保険加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間として、

 

「前払期間」
この保険期間の開始の時からこの保険期間の半分の期間を経過するまでの期間(前払期間)は、各年の支払保険料の半分を前払保険料として資産に計上して、残りの半分は支払保険料として損金(税金計算上の経費)にします。

 

「前払期間経過後の期間」
この保険期間のうち、上記の前払期間を経過した後の期間は、各年の支払保険料の全額を支払保険料として損金にします。加えて、前払期間に資産計上した前払保険料を、前払期間経過後期間で均等に取り崩した額を損金にします。

 

保険期間が終身で、保険料の支払いが終身ではなく一定の期間だけの有期である場合

保険期間が終身で、保険料の支払いが終身ではなく一定の期間だけの有期である場合は、
がん保険加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間として、

 

「前払期間のうち保険料払込期間が終了するまでの期間」
この保険期間の開始の時からこの保険期間の半分の期間を経過するまでの期間(前払期間)のうち、保険料払込期間が終了するまでの期間については、
支払保険料 ( 年額 ) × ( 保険料払込期間 / 保険期間 ) = 当期分保険料 ( 年額 )
として、その当期分保険料(年額)の半分を前払保険料として資産に計上して、残りの半分は支払保険料として損金(税金計算上の経費)にします。

 

「前払期間のうち保険料払込期間が終了した後の期間」
前払期間のうち保険料払込期間が終了した後の期間については、
当期分保険料(年額)の半分の金額について、前払保険料(資産)を取り崩して損金にします。

 

「前払期間経過後の期間のうち保険料払込期間が終了するまでの期間」
前払期間経過後の期間のうち、保険料払込期間が終了するまでの期間については、
各年の支払保険料の額のうち、
当期分保険料(年額)を超える金額を、前払保険料として資産に計上して、
残額を損金にします
また、次の算式により計算した取崩損金算入額を、「前払期間のうち保険料払込期間が終了するまでの期間」に資産計上した前払保険料から取り崩して損金にします。
取崩損金算入額 = [ ( 当期分保険料 / 2 ) × 前払期間 ] / ( 105 – 前払期間経過年数 )

 

「前払期間経過後の期間のうち保険料払込期間が終了した後の期間」
前払期間経過後の期間のうち保険料払込期間が終了した後の期間については、
当期分保険料の金額と取崩損金算入額を、「前払期間」と「前払期間経過後の期間のうち保険料払込期間が終了するまでの期間」の前払保険料(資産)から取り崩して損金にします。

 

 

給付金(保険金)の受取人が被保険者(被保険者の遺族含む)の場合

役員と従業員の大半が加入している場合は、給付金(保険金)の受取人が会社の場合と同様の処理になります。
なお、損金にするときの勘定科目は支払保険料ではなく福利厚生費になります。

特定の役員や従業員(これらの者の親族含む)だけを被保険者としている場合には、支払った保険料が、役員や従業員に対する給与になります。

 

 

おわりに

がん保険は、医療保険と同様に、税務上の取扱が難しく税務リスクも高いため、法人で加入をお考えの際は、加入する前に税理士とよく相談してくださいね。

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最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。