カテゴリー: 国際課税

国際課税の基礎-10-タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回はタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)について説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

タックスヘイブンとは

タックスヘイブン(tax haven)、日本語では租税回避地といいます。”haven”は避難所といった意味を持っていて、似ている単語に”heaven”(天国)があります。このためタックスヘイブンを税金天国だと思っておられる方も少なくないようですが、間違えないようにしてくださいね。とは言っても税金天国だとしても、あながち間違っていないのが面白いところですが。

 

主だった産業を持っていない小さな国などが、海外から投資してもらい外貨を獲得するために、税金を無くしたり、とても低い税率にしている場合があります。このような税金の優遇政策を行っている国や地域のことをタックスヘイブンといいます。オフショア金融センター、単にオフショアともいいます。

 

イギリスの海外領土であるケイマン諸島、同じくイギリス領ヴァージン諸島などがタックスヘイブンとして有名です。なお、会社登記やファンドなどがこれらのタックスヘイブンにあったりすると、それだけで信用を落としてしまうという風潮もあるようです。

 

 

タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)

日本の会社が、税金がない、税金が著しく安いタックスヘイブンに子会社を設立して、日本での納税から不当に免れようとする租税回避を防ぐための制度として、タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)があります。

タックスヘイブン税制の対象になる外国子会社等がある場合、その外国子会社等の所得(税金上の利益、もうけ)を、日本の親会社の所得と合算して、その合算された所得について日本で税金がかかることになります。

 

タックスヘイブン税制の具体的な内容は、

日本の法人などが、発行済株式や出資金額の50%を超える分を直接間接に保有している外国関係会社で、

その外国関係会社の本店などが所在する国や地域おける税の負担が、日本の税の負担に比べて著しく低い場合(特定外国子会社等といいます)、

その特定外国子会社等の所得のうち、日本の法人などの株式等の保有割合の分を、その日本の法人の所得に合算して税金をかける制度です。

 

 

タックスヘイブン税制が適用されない特定外国子会社等

タックスヘイブン税制は、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立するなどによって不当に税金を減らす行為、租税回避を防ぐための制度です。

そのため、特定外国子会社等のうち、租税回避を目的としたものではなく、タックスヘイブンにおいて事業活動を行うことに合理性があるなど一定の条件を満たす、例えばタックスヘイブンの現地において製造業を営んでいるなどの場合は、タックスヘイブン税制は適用されません。

 

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で起業した、または起業を考えている経営者様で税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金や会計だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い若手の公認会計士・税理士が、あなたとあなたの会社の右腕となって支援させて頂きます。

 

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

国際課税の基礎-9-過少資本税制

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回は過少資本税制について説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

過少資本(Thin Capital)とは

会社の資金調達の方法は、自己資本(株式への出資)によるものと他人資本(借入金や社債など)によるものがあります。

 

日本の会社が自己資本で資金調達をして、その見返りとして配当金を支払う場合、法人税等が差し引かれた後の利益から配当を行うことになります。よって支払配当金は損金(税金上の費用)することはできません。

対して、日本の会社が他人資本で資金調達をして、その見返りとして利息を支払う場合、その支払利息は損金(税金上の費用)にすることができます。

 

同じ金額の支払配当金と支払利息を比べると支払利息の方が税金が安くなる、つまり、自己資本で資金調達をして配当を支払うよりも、他人資本で資金調達をして利息を支払った方が節税になるのです。

このことから、日本にある外資系の法人が、外国にある親会社(国外支配株主等)から資金調達するときには、その大部分を借入金で行い株式出資の割合を非常に小さくする場合があります。これを過少資本(Thin Capital)といいます。

 

 

過少資本の問題点

過少資本となっている日本にある外資系の法人が、外国にある親会社から資金調達を行って、その見返りを支払う場合を考えます。

本来であれば配当金として支払うものを、利息として支払うことで、日本で納める法人税等が減ってしまいます。

また、親子会社間における借入金の利率というのは簡単に操作できるので、親子会社間での利益の移転も容易に行えます。

このように、過少資本を認めてしまうと、日本にある外資系の法人が日本に納める法人税等を不当に減らすことができてしまいます。これが過少資本の問題点です。

 

 

過少資本税制

上記のような過少資本の問題点を防ぐために、自己資本に対して借入金の割合が大きい場合、日本にある外資系の法人が外国にある親会社などに支払う借入金利息について、損金(税金上の費用)にできる額に制限を設けています。これを過少資本税制といいます。

 

具体的には、

 

「日本の法人の国外支配株主等からの借入金等の期中平均残高」が、「日本の法人の自己資本のうち国外支配株主等の持分」の3倍を超えるとき、

かつ、

「その日本の法人の利付負債総額の期中平均残高」が、「その日本法人の自己資本」の3倍を超えるとき、

 

日本の法人が国外支配株主等に支払う借入金利息等のうち、
「日本の法人の国外支配株主等からの借入金等の期中平均残高」が「日本の法人の自己資本のうち国外支配株主等の持分」の3倍を超える部分に対応する借入金利息等は、
損金にすることができません。

 

国外支配株主等とは、日本の法人の株式の50%以上を直接間接問わず持っている外国法人などをいいます。その他にも外国にある兄弟会社や、資金供与者等も含まれます。

 

借入金利息等とは、国外支配株主等に支払う利息に限りません。保証料や割引料といった名称であっても、その性格が借入金利息に準ずるものであれば、借入金利息等に含まれます。

 

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で起業した、または起業を考えている経営者様で税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金や会計だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い若手の公認会計士・税理士が、あなたとあなたの会社の右腕となって支援させて頂きます。

 

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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

国際課税の基礎-8-移転価格税制

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回は移転価格税制について説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

移転価格税制の意義

日本の会社が国外関連者と取引を行う場合、その取引価格を操作して、国外関連者以外の第三者との取引価格と異なる価格設定をすることが可能です。

ここで国外関連者とは、海外にある親会社や子会社、兄弟会社など、その日本の法人と関連がある外国法人のことをいいます。

 

例えば、日本の親会社が海外の子会社に商品を売るときに、通常価格から大きく割引する場合を考えてみます。

日本の親会社が海外の子会社に通常価格で商品を売っていたら、日本の親会社に通常の利益が出て、日本で税金を払います。海外子会社も通常の利益が出て、外国に税金を払います。

日本の親会社が海外の子会社に割引価格で商品を売ってしまうと、日本の親会社の利益が減って、日本で払う税金が少なくなってしまいます。一方、海外子会社の利益は増えて、外国で払う税金も増えることになります。日本は税収が減って困りますね。

日本の親会社が海外の子会社に割高な価格で商品を売ってしまうと、日本の親会社の利益は増えて、日本で払う税金が多くなります。一方、海外子会社の利益は減って、外国で払う税金も減ることになります。その外国は税収が減って困りますね。

 

このように、取引価格を操作することによって利益を国外に移転させて、税金を不当に減らすことを防ぐために、日本や各国では移転価格税制を導入しています。

 

 

移転価格税制とは

取引価格を操作することによって利益を日本から国外に移転させて、日本の税金を不当に減らすことを防ぐために、日本の法人と国外関連者との間の取引については、独立企業間価格(Arm’s Length Price)といわれる、適正な取引価格で行ったものとみなして、所得(税金上の利益)を計算して税金をかけるものとしています。これを移転価格税制といいます。

繰り返しになりますが、国外関連者とは、海外にある親会社や子会社、兄弟会社など、その日本の法人と関連がある外国法人のことをいいます。

独立企業間価格とは、第三者との間の取引において、通常決められるであろう取引価格のことをいいます。

 

 

移転価格税制の数値例

移転価格税制を具体的な数値を使って説明します。

東京都港区の税理士法人インテグリティが作成した移転価格税制

日本の会社であるA社は、商品(50)を仕入れて、海外子会社であるB社に対して、独立企業間価格(100)より小さい金額(70)で商品を販売しています。A社の利益は(70-50=20)になります。

A社がB社に対して、独立企業間価格(100)で商品を販売していれば、A社の利益は(100-50=50)になります。

 

このように、A社は国外関連者であるB社との取引にあたって、独立企業間価格よりも小さい価格で取引を行ったことによって、独立企業間価格で取引を行っていれば得られたであろう利益(50)のうち(30)がB社に移転してしまい、移転してしまった利益(30)については日本で税金をかけられなくなってしまいます。

それを防ぐために、移転価格税制を適用して、A社とB社との間の取引は独立企業間価格で行われたものとして利益を計算して、利益(50)に対して日本で税金をかけることができるようにします。

 

この場合、A社の利益(30)については、日本とB社の所在する国の2国において二重に税金がかかってしまうことになります。この二重課税を排除するために、A社は日本の国税庁に対して相互協議を申請して、B社の所在する国の税金を減らしてもらうように、B社の所在する国と協議してもらいます。

 

 

移転価格税制の対象

日本の移転価格税制では、
日本の会社が国外関連者から支払いを受ける金額が独立企業間価格に比べて小さい場合と、
日本の会社が国外関連者に支払う金額が独立企業間価格に比べて大きい場合
が対象になります。

 

その逆である、
日本の会社が国外関連者から支払いを受ける金額が独立企業間価格に比べて大きい場合と、
日本の会社が国外関連者に支払う金額が独立企業間価格に比べて小さい場合
については日本の移転価格税制の対象にはなりません。この場合は日本の税収は増えることになるからです。ただし、国外関連者がある国において移転価格税制が適用される可能性はあります。

 

このように移転価格税制とは、国と国との税金の取り合いを調整する制度ともいえるのです。

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で起業した、または起業を考えている経営者様で税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金や会計だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い若手の公認会計士・税理士が、あなたとあなたの会社の右腕となって支援させて頂きます。

 

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
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東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

国際課税の基礎-7-外国子会社配当益金不算入制度

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、 中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回は外国子会社から受け取る配当金が益金不算入になる制度ついて説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

外国子会社配当益金不算入制度

外国子会社配当益金不算入制度とは、日本の親会社が外国の子会社から受け取る配当金について、その配当金(外国において外国源泉税が差し引かれる前の額)の95%は益金不算入になる制度のことをいいます。

日本の親会社が外国の子会社から受け取る配当金の95%は益金不算入になるので、日本の親会社は、外国子会社からの配当金の95%については、益金(税金上のもうけ)に入れなくていいので税金がかかりません。
残りの5%についてだけ日本の親会社の益金(税金上のもうけ)になって、税金がかかります。

このように、外国子会社配当益金不算入制度の対象になる配当金は、益金不算入になって日本で税金はかかりません。よって日本と外国で二重に税金がかかるということはありません。

二重課税を排除する必要がないため、
外国子会社配当益金不算入制度の対象になる配当金から、外国において差し引かれる外国源泉税は、日本の親会社の直接外国税額控除の対象になりません。
また、外国子会社配当益金不算入制度の対象になる配当金から、外国において差し引かれる外国源泉税は、日本の親会社の損金(税金上の経費)にもなりません。

 

 

外国子会社配当益金不算入制度が適用される外国子会社

すべての外国子会社からの配当金について外国子会社配当益金不算入制度が適用されるわけではありません。

外国子会社配当益金不算入制度が適用される外国子会社は、次の条件を2つとも満たす外国子会社になります。

  • 日本の親会社が、その外国子会社の発行済み株式等のうち25%以上の株式等を持っている
  • 日本の親会社が、その外国子会社の配当金の支払い義務が確定する日より6ヶ月以上前から、その外国子会社の株式等の25%以上を継続して持っている

 

 

外国子会社配当益金不算入制度が適用されない外国子会社からの配当金

25%以上の株式を持っていないなどの理由で、外国子会社配当益金不算入制度が適用されない外国子会社からの配当金については、その全額が日本の親会社の益金(税金上のもうけ)になるので日本で税金がかかります。その結果、日本と外国で二重に税金がかかることになります。

二重課税を排除するため、
外国子会社配当益金不算入制度が適用されない外国子会社の配当金から、外国において差し引かれる外国源泉税は、日本の親会社の直接外国税額控除の対象になります。
また、外国子会社配当益金不算入制度が適用されない外国子会社の配当金から、外国において差し引かれる外国源泉税は、日本の親会社の損金(税金上の経費)になります。

 

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

港区、渋谷区、新宿区など東京23区で起業した、または起業を考えている経営者様で税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、東京都港区にある当税理士法人にお声がけください。税金や会計だけでなく、ビジネスやファイナンスにも強い若手の公認会計士・税理士が、あなたとあなたの会社の右腕となって支援させて頂きます。

 

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
その他の税金や節税、起業などについては情報の一覧をご覧ください。

東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤でした。

国際課税の基礎-6-海外支店と海外子会社の違い

はじめに

こんにちは、東京都港区の税理士法人インテグリティ、公認会計士・税理士の佐藤です。

 

大企業だけでなく、 中小企業やベンチャー企業が海外進出することはめずらしくない時代になりました。海外進出、つまり国境を超えて経済取引を行うときの税金は、日本と相手国のどちらに払うことになるのでしょうか。国際課税とは、国際取引という2国間以上にかかわる課税のことをいいます。

 

国際課税の基礎として、今回は海外支店海外子会社の違いについて説明したいと思います。

 

なお、国際課税についての大枠をザックリと理解してもらうことを目的にしているので、用語の使い方や正確性などよりも分かりやすさを重視していることをご了承ください。
実際の適用にあたっては国際課税に詳しい税理士にご確認ください。

 

 

海外進出の方法-海外支店と海外子会社-

海外に進出する場合、支店を設置する方法と、子会社を設立する方法があります。

 

支店は会社の一部を構成するもので、本店も支店もひっくるめて1つの会社になります。

対して、子会社は親会社とは別の法人であり、子会社だけで1つの会社として機能します。

 

一般的には、現地に子会社を設立して海外進出する場合が多いですが、商社や金融機関など支店として海外進出している場合もあります。また、許認可の関係で支店ではなく子会社にせざるを得ない場合も多くあります。

 

 

海外支店

海外支店が稼いだ所得(もうけ)は、その海外支店がある国において税金がかけられます。

また、海外支店は日本にある本店と同じひとつの会社です。そのため、海外支店が稼いだ所得は日本の本店の所得と一緒にされて合わせて日本で税金がかけられます。

海外支店が稼いだ所得については、海外支店がある国と日本とで二重で税金がかかってしまうので、それを解消するために外国税額控除制度があります。
外国税額控除制度については、
国際課税の基礎-4-直接外国税額控除とは
国際課税の基礎-5-みなし外国税額控除とは
を参照ください。

 

日本の本店と海外支店の損益は合算されるので、例えば、海外支店は設置したばかりのため当面は赤字が続くといった場合でも、その海外支店の赤字は日本の本店の利益と合算されるため、会社全体の所得を減らすことができて節税になります。

 

日本の本店と海外支店の間での取引から生じた損益は、原則として税金を計算するうえでは認識しません。例えば、海外支店が本店に支払った支払手数料や支払利息は、海外支店の費用になりませんし、本店の収益にもなりません。

日本の本店と海外支店の間での資金のやりとりについても、原則として自由に行うことができます。

 

海外支店の設置は、海外子会社の設立に比べて、一般的に手続きが簡単で費用も少なくて済みます。

 

 

海外子会社

海外子会社は、日本の親会社とは別法人格であって、その進出先である外国の現地の法人です。海外子会社が稼いだ所得(もうけ)には、その外国にある他の法人と同様に、進出先の外国で税金がかけられます。海外子会社の所得について、原則として日本で税金はかかりません。

日本の親会社と海外子会社は別の会社です。そのため、海外子会社が稼いだ所得と日本の親会社の所得が合算されることは原則としてありません。(タックス・ヘイブン税制が適用される場合は日本の親会社と海外子会社の所得が合算されます。また、連結納税の範囲に海外子会社は含まれません。なお、連結会計では日本の親会社と海外子会社の損益は合算されますが、それは連結財務諸表を作成するためであって、税金には影響しません。)

 

日本の親会社と海外子会社の間での取引は、日本の親会社がその他の外国法人と取引する場合と同じ扱いになるので、原則として損益は認識します。例えば、海外子会社が日本の親会社に支払った支払手数料や支払利息は、海外子会社の費用になりますし、日本の親会社の収益にもなります。

 

日本の親会社と海外子会社の間での取引が、通常よりも高い価格または低い価格で行われている場合は、移転価格税制の対象になるので注意してください。独立企業間価格といわれる、関係会社ではない他の取引先との間で取引を行った場合の価格で、日本の親会社と海外子会社が取引を行ったものとして税金を計算することになります。

 

日本の親会社と海外子会社の間での資金のやりとりについても、自由に行うことができません。配当といったカタチで資金を吸い上げるのか、貸付け、借入で資金を融通するのか、その場合、どう税金がかかってくるのかを検討しなければいけません。

例えば、海外子会社が日本の親会社から多額の借入をしている場合は、過少資本税制の対象なるので注意してください。その場合、海外子会社が日本の親会社に支払う利息について、一定額までしか費用にできなくなります。

日本の親会社が海外子会社から配当金を受け取る場合は、受取配当金の益金不算入の制度があります。一定の要件を満たす海外子会社からの配当金について、その配当金の95%は日本の親会社の所得に含めなくてもよくなります。所得に含めなくていいので、海外子会社からの配当金の95%については税金がかかりません。

 

海外子会社の設立は、海外支店の設置に比べて、一般的に手続きが煩雑で費用もかかってしまいます。

 

 

おわりに

国際課税につきましては、下のトピックも参照ください。

 

海外に限らず、支店と子会社では税金はもちろん、組織運営の観点からも大きな違いがあります。事業を拡大して新しい拠点を設けようとお考えの場合は、メリットとデメリットを比較して、支店にするか子会社にするかをよく検討してくださいね。

国際課税は、大半の税理士が苦手としている分野です。「国際課税」という名称だけは聞いたことがあるけど中身については全然分からない、という税理士も珍しくありません。当税理士法人においても、基本的な国際課税には対応しておりますが、複雑な問題については大手会計事務所を紹介させていただいております。

 

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